 |
|
適応と利点 |
食道癌も胃癌も内視鏡検査が普及して早期発見できる症例がふえてきました。早期発見により、体への侵襲がより軽微な内視鏡的粘膜切除術(EMRと略します)が可能となります。EMRとは、食道や胃に発生する粘膜病変(ポリープ、腺腫、早期がんなど)を内視鏡を使って、高周波電流にて切除する方法です。利点として手術創の痛みがない、切除翌日には歩行ができ、早期の食事開始が可能である、手術後も胃が温存されるため食生活が保たれることなどが挙げられます。実際にEMRが可能かどうかは病変の大きさ、深さ、部位、組織型や患者さん自身の状態などから判断します。当院では色素内視鏡や超音波内視鏡などの特殊検査により的確な術前診断を行い、開腹手術が必要かEMRで根治可能かを決定します。
|
| 方法 |
内視鏡治療の方法には大きく分けて4つの方法があります。
1) 隆起の根部に切開スネアーをかけて切離するポリペクトミー法、
2) 2チャンネルスコープを用いて病変部を把持切除するストリップ法、
3) 粘膜を吸引して切除する吸引粘膜切除法(EAM法)、
4) 病変の周囲を切開して粘膜を剥離する切開剥離法です。
それぞれに特徴があり、病変の形状や部位により最適な方法を選択します。手技により異なりますが4〜11日間の入院を要します。これらの治療を行う際、点滴確保の上、血行動態呼吸状態をモニタリングして鎮静剤、鎮痛剤を使用します。当日は、トイレ歩行以外は控えていただきます。腹痛、発熱、吐下血がなければ翌日から歩行は可能で、その後数日間の点滴、内服と絶食を必要とします。切除した病変の病理組織学的結果によっては追加の内視鏡治療や外科的手術が必要になることもあります。治療がうまくいっても定期的な内視鏡検査(初めは2〜3ヶ月毎、その後は6〜12ヶ月毎)は必ず受けていただきます。
| 1)ポリペクトミー法 |
2)ストリップ法 |
 |
 |
| 3)吸引粘膜切除法(EAM法) |
4)切開剥離法 |
 |
 |
| |
画像をクリックすると拡大します。 |
|
| 合併症 |
EMRの合併症には出血と穿孔があります。出血に関しては、切除中にみられる場合と切除当日〜3日後にみられる場合があります。そのほとんどは内視鏡的止血術にて止血できますが、ごく稀には輸血や緊急手術を要することがあります(0.5%〜1%)。穿孔は切除部位の消化管壁に穴があいてしまうことで、腹痛、発熱などを伴います。穿孔部位の修復も内視鏡的に行いますが緊急の外科手術を必要とすることがあります(0.5%〜1%)。出血や穿孔などの合併症が生じた場合は絶食や入院期間が延長されます。
|
| 現状 |
近年、EMRはその治療成績の向上と侵襲性の低さから増加傾向にあります。当院でも平成7年から年次増加し、現在では年間100例を超えるEMR症例を経験しています。そのうち約40%は他院からの紹介患者さんです。定期的な内視鏡検査による早期発見が可能となりつつある現在、低侵襲な内視鏡治療の担う役割は大きく、さらなる治療成績の向上と安全性の確保が期待されています。
|