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リウマチ内科

膠原病とは

膠原病というのは、ひとつの病気ではなく、いくつかの病気の総称です。古くは、クレンペラーという学者が唱えた次の6つの病気を指しました。

  1. 関節リウマチ (RA)
  2. 全身性エリテマトーデス (SLE)
  3. 強皮症 (SSc)
  4. 多発性動脈炎 (PN)
  5. 皮膚筋炎/多発性筋炎 (DM/PM)
  6. (リウマチ熱・・・ただし現代では、これだけは膠原病に含めない)

これらは、全身の皮膚や内臓・関節などのあちこちが侵されるという特徴があり、広く人体に分布する膠原線維が病気の本態ではないかと考えられ「膠原病」と呼ばれたわけです。しかし、現在では、その学説は否定され、膠原線維ではなく、免疫の異常による血管の炎症などが主であると考えられています。また、膠原病の範囲も、同じようなメカニズムで発病するいくつかの病気が知られるようになり、それらを膠原病に含めたり、「膠原病類縁疾患」と呼んだりするようになりだんだん広げられました。このような病気には、上記の5つの疾患のほかに次のようなものがあります。

  • 混合性結合織病、シェーグレン症候群、ベーチェット病、血管炎症候群(ANCA関連血管炎を含む)、リウマチ性多発筋痛症、成人発症スチル病、脊椎関節症(強直性脊椎炎・感染性関節炎などを含む)など

多くの膠原病および類縁疾患は、自分の免疫力が自分の体を攻撃して傷つけるいわゆる「自己免疫疾患」です。攻撃の標的は皮膚、関節、腎臓、肺、心臓、消化器、脳など多くの臓器に及ぶため、症状や検査の所見が多彩であるのが特徴です。

膠原病の症状と診断

膠原病の症状として比較的特徴的なのは、関節痛と皮疹でしょう。関節痛は、病気により、そのいたみ方や腫れ方は違いますが、「複数の関節に見られること(多発性)」と「数週から数ヶ月にわたり持続すること(持続性)」という特徴があります。皮疹も多彩でSLEでの蝶形紅斑・日光過敏症が有名ですが、それ以外にもいろいろなものがあり、時にはウイルス感染症やアレルギー性のものと区別がつきにくいものもあります。そのほか、寒冷刺激で手指や足の指が強い阻血状態により、白・青色に変色するレイノー現象や脱毛もよく見られます。ただし、膠原病でも発熱や全身倦怠感などのありふれた症状しかでないケースもあり、また内臓の症状である胸の痛み、腹痛、動悸、呼吸困難、手足のむくみなどが目立つこともあるので、症状だけでは診断できません。

診断のために欠かせないのが検査です。膠原病の検査所見の特徴は、3つあります。

  1. 自己抗体の検出

    自己免疫疾患である膠原病では、自分の体を攻撃する抗体(本来細菌やウイルスを攻撃するタンパク質)が、しばしば検出され、それを「自己抗体」と呼びます。その代表が、抗核抗体であり、人間の細胞の核に反応し、膠原病診断の糸口になります。さらに、病気によって「疾患標識抗体」といわれる自己抗体があり、SLEの二重鎖抗DNA抗体、Sm抗体、強皮症のScl-70抗体、抗セントロメア抗体、関節リウマチの抗CCP抗体などはその病気以外で抗体の検出されることがほとんどないため、診断には大変重要です。

  2. 強い炎症の所見があること

    炎症反応というのは、体に細菌やウイルス、異物などが入った時に見られる反応で、熱が出たり、局所が腫れたりするのも、炎症反応の一部といえます。同じように、全身的に炎症が起こると、血液検査では赤沈、CRPの上昇、高ガンマグロブリン血症、血小板の増加、血液凝固の促進などいろいろな反応が、(病気によりそのパターンは一様ではありませんが)見られます。これらの値の変動は、病気の勢い(活動性といいます)をみたり、治療中の再発を早期に発見するために大変重要です。

  3. 内臓障害による検査値異常

    上述のように、膠原病の内臓障害は、腎、肺、心臓消化器、脳などいろいろなところに及ぶため、蛋白尿・尿毒症(腎)、胸部レントゲン異常、呼吸機能異常(肺)、心電図異常・心嚢液貯留(心)、胃腸潰瘍・穿孔(消化管)、脳波異常(脳)などが見られ、診断上有用です。ただし、これらの所見の程度や組み合わせは、同じ病気でもひとりひとり異なるため、各領域の専門医と緊密な連携ができる環境で、診療にあたる必要があります。

膠原病の治療

膠原病の治療は、病気によって、またその活動性によって異なりますが、その本質は、「免疫抑制療法」とその他の支持療法があります。

本来、膠原病は免疫の異常、特に自己免疫によることが多いので、免疫力を薬で抑える免疫抑制療法は、大変合理的で、膠原病治療の中心です。そのやり方に、副腎皮質ステロイド剤(プレドニゾロンなど)とそれ以外の薬を使う方法があります。副腎皮質ステロイドは、効果が比較的確実で即効性があり、胎児への催奇形性などが少ないため若い女性にも使いやすいなどの利点がありますが、大量投与・長期投与では、感染症、動脈硬化、糖尿病、血栓症、骨粗鬆症など多くの副作用があり、病状を考慮し、慎重に投与することが必要です。その他の免疫抑制剤にはアザチオプリン(イムラン)、シクロフォスファミド(エンドキサン)、ミゾリビン(ブレディニン)、メトトレキサート(リウマトレックス)、タクロリムス(プログラフ)、シクロスポリン(ネオーラル)などがあり、病状によって使い分けられます。ただし、これらの薬には多かれ少なかれ、日和見感染症、発ガン性、催奇形性などという副作用があるため、患者さまの年齢や社会状況に応じた投薬が必要になります。

支持療法として、腎臓や肺・消化器などの各臓器の症状を緩和する薬や、薬剤の副作用を予防するためにのむ薬などたくさんの薬があります。これらは、患者さま一人一人のリスクや症状の程度を考えて、使用することはもちろん、相互作用や副作用に十分気をつけて服薬していただく必要があります。

膠原病の予後

少し前まで膠原病は、「難病」「不治の病」と考えられ、癌と同じように恐れられていました。しかし、最近いろいろな施設から治療成績の報告があり、薬剤や投与法の進歩によって致命率は10年間で10-15%とそれほど高くないことがわかってきました。もちろん、治る(治癒する)ことは稀ですし、長期間の治療を余儀なくされることにはなりますが、適切な治療を受ければ切除不能癌のような絶望的な状況とは全く異なります。また、最近では、比較的軽症で見つかるケースが多く、当然治療も安全に行え、QOL(生活の質)にも、大きな影響のないケースが増えています。

膠原病の多くは、女性に多いため、妊娠と出産ができるかという問題は大きな問題です。このことについては、一部の患者さまを除いて可能になりつつあります。ただし、膠原病患者さまの妊娠・出産というのは、産科的なリスクのみでなく、ホルモンや免疫刺激によって膠原病の悪化につながることの多いイベントであるため、必ず専門医の管理下で、適切な治療を受けながら臨む必要があります。

膠原病と言われたあなたへのアドバイス

  1. 少なくとも一度は、専門医の精密検査を受け、自分の病状についてよく理解してください。
  2. 日常生活での不摂生は、病気の悪化のもとです。禁煙、節塩、暴飲暴食をしない、睡眠を十分に取るなどの基本的なところに気をつけてください。
  3. 薬物治療は、主治医との信頼関係を大切にし、きちんと行うこと。薬の副作用は怖いけれど、病気を放っておくことはもっと怖い。勝手な思い込みで薬を止めたり減らしたりすることはときに重大な結果を招きます。
  4. 民間療法には、有害なものもあります。また、その有益性は科学的に証明されていません。あくまでも自己責任で行える範囲にして下さい。
  5. 膠原病・リウマチは、糖尿病や高血圧と同様に、普通の生活をしながら、薬でコントロールできる病気になりつつあります。希望をもって前向きに生活・治療していきましょう。

関節リウマチ治療の最近の動向

「リューマチ」といえば不治の難病、いったん罹ると「痛い、痛い」と言いながら、若くして歩けなくなり、ついに寝たきり、早死にする。そんなイメージをお持ちの方がまだいらっしゃるのではないでしょうか? この20年間で関節リウマチの治療は大きな進歩を遂げました。以前は、夢のように思われていた寛解(治療さえしていれば、ほとんど症状のない状態)が、しばしば達成できるようになり、その中から治療を中止できる事例(治癒?)もありうることが知られるようになりました。また、治療の目標が、単に痛み・炎症をとる(臨床的寛解)のみでなく関節の破壊・変形を防ぐ(構造的寛解)、身体機能の悪化を防ぐ(HAQ寛解)に向けられるようになり、患者さまの生活の質(クオリティ・オブ・ライフ、QOL)は確実に向上してきており、生命予後の改善(健康な人と同じように長生きができる)も期待されています。

関節リウマチの薬…抗リウマチ薬

関節リウマチの治療を大きく変えたのは、この十数年間の「薬」の進歩です。20年前には治療の主役であった「副腎皮質ステロイド」や「(非ステロイド系)消炎鎮痛剤」は、あくまでも症状をとるだけの薬であり、しかも副作用が少なくないことから、今ではその役割はごく限られたものになっています。それに代わって、治療の主役となったのが「抗リウマチ薬」、その代表選手がメトトレキサート(MTX、リウマトレックス)です。この薬は、重い副作用があることで、何回かマスコミにも取り上げられているので、ご存じの方も多いと思います。間質性肺炎や造血障害・感染症などは死亡例の報告もある重大な副作用ですが、それでも使い続けられているのは、週に数錠内服するだけで、投与した患者さまの50%以上で効果があり、その1-3割ではほぼ寛解が得られという高い有効性があるからです。MTX以外にも、スルファサラゾピリジン(アザルフィジンEN)、ブシラミン(リマチル)、タクロリムス(プログラフ)、ミゾリビン(ブレディニン)、イグラチモド(コルベット、ケアラム)などのいろいろな抗リウマチ薬があり、患者さまの年齢や発病からの時間・重症度などによって使い分けてられています(表2)。抗リウマチ薬には「重い副作用がありうる」「効果の見られるのが遅い(開始後6~12週)」「途中で効かなくなることがある」など他の薬にはない特徴があります。勝手に止めたり、量を調節したりすることなく、主治医とよく相談しながら治療を続けることが大切です。

【表2】抗リウマチ薬
薬剤名 商品名 効果 副作用(重篤なもの)
金剤(注射) シオゾール 薬疹、間質性肺炎、腎炎
ブシラミン リマチル タンパク尿、間質性肺炎、貧血
サラゾピリン アザルフィジンEN 好中球現象、肝障害
アクタリット オ―クル/モ―バー  
イグラチモド コルベット/ケアラム 肝障害、胃腸障害、造血障害
ミゾリビン ブレディニン  
メトトレキサート リウマトレックス 感染症、間質性肺炎、腎障害、造血障害
タクロリムス プログラフ 感染症、腎障害、糖尿病の悪化、中枢神経症状
レフルノミド アラバ 感染症、肝障害、間質性肺炎

生物学的製剤の登場

MTXなどの抗リウマチ薬が広く使われるようになり、「関節リウマチは薬でよくなる」ことが、少しずつ認められるようになりましたが、まだ十分ではありませんでした。第一に効果の出ない、あるいは副作用で治療を継続できない患者さまが50%近くおられました。第二にこれらの薬で症状が改善した患者さまでは、無治療の例よりも明らかに関節の破壊は起こりにくいのですが、5年・10年と経つと少しずつそれがみられるようになります。つまり、抗リウマチ薬では、関節の変形や機能障害は遅らせることはできても、完全に防ぐことはできなかったのです。

20世紀末、遺伝子工学の進歩により人間の体の中でいろいろな働きをしているたんぱく質の構造を作り変えて、薬として利用する「生物学的製剤」が登場しました。その一つが「TNFα阻害剤」です。体内でおこる様々な炎症を仲立ちし、関節リウマチの悪化にも大きな役割を果たす「TNFα」というたんぱく質を「抗体」や「受容体」などの別のたんぱく質を作って、働かなくしてしまうというものです。わが国でも2003年にこの種の薬が認可され、すでに10万人を超える関節リウマチ患者さまに使われています。有効率は高くほぼ90%、そのうち3-4割の患者さまで「臨床的寛解」といわれる状態を得ることができます。さらに、これらの薬では、抗リウマチ薬とうまく併用すれば、関節の痛みや腫ればかりでなく、その破壊・変形もほぼ完全に抑制できることがわかってきました。副作用としての重症感染症の頻度が高い、薬が高価であるなどの問題はありますが、これらの薬が関節リウマチの治療成績を飛躍的に向上させたのは間違いありません。現在ではTNFα阻害剤のほかにIL-6阻害剤やTリンパ球の阻害剤などの別の生物学製剤も認可され、合計7剤(表3)が関節リウマチに使えるようになりました。また、最近では生物学的製剤に勝るとも劣らない効果をもつ内服薬として「低分子分子標的薬」トファシチニブ(ゼルヤンツ)が登場し、さらに治療成績の向上が期待されています。

【表3】関節リウマチにおける生物学的製剤
  1. ほぼすべての薬剤で効果は有効率はおよそ90%、40%程度の患者では寛解が得られる。
  2. 関節破壊を予防する効果は、すべての抗リウマチ薬より優れている。
  3. 問題になる副作用は感染症、肺炎が2-3人/100患者・年で起こる。
  4. 薬剤の中止(治癒?)は、発症早期に導入した症例で可能かもしれない。
  レミケード エンブレル ヒュミラ シンボニー シムジア アクテムラ オレンシア
標的 TNFα(腫瘍壊死因子) IL6受容体 T細胞
製剤 キメラ抗体 受容体 ヒト型抗体 ペグ化Fab ヒト化抗体 CTLA4-Fc
投与法 点滴静注 皮下注射 点滴静注 点滴静注
頻度 1回/2月 2回/週 1回/2週 1回/4週 1回/2週 1回/月 1回/月
MTX併用 必須 望ましい 望ましい 望ましい 望ましい 不要? 望ましい
長所 投与法
薬剤中止
寛解率
継続率
投与法 投与法 投与法 投与法
強い効果
安全性
短所 効果減弱
(HACA)
投与頻回 効果減弱 経験不足 経験不足 感染リスク 効果が遅い

今後の課題と患者さまへのメッセージ

生物学的製剤の開発により、飛躍的に治療成績が向上した現状で、われわれリウマチ専門医には新しい課題が課せられています。まず、第一に、新しい治療の正しい評価です。抗TNF薬が使われるようになって、海外で約20年、日本ではまだ10年あまりにすぎません。短期的には副作用のことを考慮しても、優れた治療成績でしたが、今後10年、20年と副作用や効果がどうなるのか、まだわれわれは知りません。当科でも厚生労働省科学研究や日本リウマチ学会の多施設研究などに参加することで、その検証に取り組んでいます。我々の課題の2つ目は、副作用の克服です。当科では、のべ400人を超える患者さまに生物学的製剤を使ってきましたが、そのうち毎年数人が肺炎をふくむ重症の感染症で入院してこられます。これは、全国的にみるとむしろ低い頻度ですが、患者さまひとりひとりの立場にたてば大変なことです。このような副作用の頻度を減らし、不幸にして起こった場合も安全に対応するために、できる限りの努力と工夫をしていかねばなりません。最後の課題は、これらの薬が効かなかったり、合併症や副作用のために使えない患者さま(たぶん全ての関節リウマチ患者さまの10-20%以下と思われます)をどうするのかということです。現状では、不十分でも効果のある薬を併用するなどしていますが、とても機能障害を予防できるようなレベルではありません。幸い、今後もいくつかの新しい抗リウマチ薬や生物学的製剤が認可される予定です。当科では、一人でも多くの患者さまを、痛みと身体障害から守れるようこれからも積極的に治療に取り組んで行く方針です。