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消化器内科

より詳しい治療方法の説明

早期食道癌、早期胃癌の内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)

適応と利点

食道癌も胃癌も内視鏡検査が普及して早期発見できる症例が増えてきました。早期発見できれば、体への負担(侵襲)がより少ない内視鏡的粘膜下層剥離術(ESDと略します)が可能となります。以前はEMR(粘膜切除術)といって切開スネアー(輪っかのようなもの)にて切除する方法が行われていましたが、最近はESDによる治療が主体になっています。
ESDとは、食道や胃に発生する早期癌や前癌病変(腺腫や異型上皮)などに対して、内視鏡を用いて、高周波電流(電気メス)にて切除する方法(図1)です。最大の利点は、好きな形や大きさに切除できることです。したがって、癌の取り残しによる再発を防ぐために、病変をひと回り大きく切除することができます。また、術後の痛みがほとんどなく、切除翌日には歩行ができ、術後2日目には食事開始が可能であります。ESD後も胃や食道の形がほぼ元通りに残るため、従来通りの食生活が保たれることなどが挙げられます。ESD治療に最もふさわしい病変は、胃癌治療ガイドラインに基づけば、『2cm以内の潰瘍を伴わない粘膜内病変』になりますが、上記条件に必ずしも一致しなくとも『適応拡大病変』であればESDを行えます。実際にESDが可能かどうかは病変の大きさ、深さ、部位、組織型(癌のタイプ)や患者さま自身の全身状態などから判断しますので、担当医と相談していただく必要があります。
当院では色素内視鏡や超音波内視鏡などの従来からある検査に加え、NBI(Narrow Band Imaging)といわれる画像強調観察、NBIを用いた拡大観察などの最新の特殊検査により的確な術前診断を行い、外科での開腹手術が必要か、消化器内科でのESDで根治可能かを決定します。

図1

ESDの実際(図2)

9〜10日間の入院を要します。これらの治療を行う際、点滴を行った上、血行動態呼吸状態を観察しながら鎮静剤、鎮痛剤(麻酔)を使用します。当日は、トイレ歩行以外は控えていただきます。腹痛、胸痛、発熱、吐下血がなければ翌日から歩行は可能で、その後数日間の点滴、内服と絶食を必要とします。切除した病変の病理組織学的結果は、深達度(癌の深さ)、切除断端(取り残しなく切除できているか)などを詳細に診断した上で、退院前に担当医より説明を受けることになります。内視鏡治療のみで完治(治癒)と判定されるのが理想ですが、もし残念ながら非治癒と判定された場合は、原則、後日再入院の上、追加の内視鏡治療や外科的手術が必要になることもあります。治療がうまくいっても初めは2〜3ヶ月後に一度、その後は6〜12ヶ月毎の定期的な内視鏡検査を必ず受けていただきます。

  • 軽度隆起している胃癌があります。

  • インジゴカルミン(検査用の色素)をかけると胃癌が浮かび上がります。その周囲にマーキング(印をつけます)を行い、切除範囲を決めます。

  • マーキングの周囲を浅く切開します。

  • 周囲から病変の剥離を行っていきます。

  • 剥離が終了し、癌が取れました。

  • 剥離した癌の病変を回収し、病理検査に提出します。

合併症

ESDの合併症には主として、穿孔と出血があります。穿孔(およそ3%くらい)は切除部位の消化管壁に穴があいてしまうことで、腹膜(や胸膜)に炎症が起きると、腹痛(胸痛)、発熱などを伴うことがあります。ほとんどのケースで、穿孔が起きても、穿孔部位の修復も内視鏡的に行いますが緊急の外科手術(0.08%)を必要とすることがごく稀にあります。出血に関しては、切除中にみられる場合と切除後しばらくしてからみられる場合があります。そのほとんどは内視鏡的止血術にて止血できますが、ごく稀には輸血(およそ1%くらい)や緊急手術(当院ではこれまでゼロ)を要することがあります。出血や穿孔などの合併症が生じた場合は絶食や入院期間が延長される場合があります。その他には症例によっては合併症が起こり得ますので、術前に担当医より十分、説明を受けて下さい。もし合併症が起きなければ、デスクワーク程度の仕事なら、通常は退院翌日にも可能です。

当院における実績

近年、ESDはその治療成績の向上と侵襲性の低さから増加傾向にあります。当院でも保険適応以前より、いち早く平成14年から開始し、年次増加し、現在(平成25年6月)までに食道で235病変、胃では1280病変のESD症例を経験しています。そのうち約40%は他院からの紹介患者さまです。これらの症例数(図3、図4)は京都ではトップの症例数にとどまらず、西日本でもトップクラスの症例数を達成しております。また、学術面においても、日本消化器内視鏡学会をはじめとした学会でのシンポジウム(主題)において演題が多数採択(表1)されており、加えてESDに対する論文も発表しております(表2)。
入院にはあらかじめ、一定のスケジュールが決まったクリニカルパスを導入し、患者さまには説明用の冊子を渡し、医師だけでなく、看護師、薬剤師、栄養士にいたるまでがチームを構成し、治療に際し、インフォームドコンセントに努めています。また週に1回、内視鏡治療症例についての検討会を行い、チーム医療としてESDを行っています。定期的な内視鏡検査による早期発見が可能となりつつある現在、低侵襲な内視鏡治療としてのESDの担う役割は大きく、さらなる治療成績の向上と安全性の確保を目指しています。

図3 【食道ESD】

図4 【胃ESD】

表1:『学会の演題発表(シンポジウムなどの主題採択分のみ)』

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日付 学会 演題名 演者
2007.09.29 第79回日本消化器内視鏡学会近畿地方会 当院におけるチーム医療としてのESDパス 戸祭直也、八木信明、藤本荘太郎
2009.09.19 第83回日本消化器内視鏡学会近畿地方会 当院の食道ESDの成績、特にm3、sm1癌症例についての検討 戸祭直也、鎌田和浩、吉田憲正
2009.10.16 第78回日本消化器病内視鏡学会総会(JDDW2009) 内視鏡関連手技における抗血栓薬のマネジメント 戸祭直也、鎌田和浩、吉田憲正
2010.03.13 第84回日本消化器内視鏡学会近畿地方会 抗血栓薬内服患者に対し上部消化管ESDを安全に行うために〜出血性偶発症と血栓性偶発症の間で〜 戸祭直也、鎌田和浩、吉田憲正
2010.05.15 第79回日本消化器内視鏡学会総会 未分化型早期胃癌に対するESD適応拡大の妥当性 八木信明、戸祭直也、内藤裕二
2010.10.02 第85回日本消化器内視鏡学会近畿地方会 ダブルスコープ法を用いた胃ESDの経験 鎌田和浩、戸祭直也、吉田憲正
2011.02.05 第94回日本消化器病学会近畿支部例会 上部消化管ESDの周術期におけるチーム医療 戸祭直也、鎌田和浩、鈴木隆裕、吉田憲正
2011.02.18 第7回日本消化管学会総会 当院において内視鏡的粘膜下層剥離術を施行した胃未分化型癌の検討 鎌田和浩、戸祭直也、吉田憲正
2011.02.19 第7回日本消化管学会総会 食道・胃ESDの偶発症としての消化管狭窄症例の検討 戸祭直也、鎌田和浩、鈴木隆裕、吉田憲正
2011.10.01 第87回日本消化器内視鏡学会近畿地方会 胃ESD困難部位における2ndデバイスとしての鋏型ESDナイフの有用性 戸祭直也、鈴木隆裕、吉田憲正
2012.10.13 第84回日本消化器病内視鏡学会総会(JDDW2012) 食道表在癌ESD症例長期成績の検討 戸祭直也、鎌田和浩、八木信明
2012.11.10 第89回日本消化器内視鏡学会近畿地方会 残胃癌に対するESDにおける戦略 川上巧、戸祭直也、吉田憲正
2013.02.16 第98回日本消化器病学会近畿支部例会 彎曲喉頭鏡を用いた咽頭ESDの有用性 戸祭直也、鈴木隆裕、吉田憲正、松井雅裕
表2

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タイトル 著者 掲載誌 出版社
内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)による全周切除にて完全切除し得たBarrett腺癌の1例 八木信明、内藤裕二、戸祭直也、加藤元一 G.I.Research 18(1): 63-67 2010 先端医学社
当院の上部消化管ESD習得への教育について-トレイニーの立場より 寄木浩行、戸祭直也、間嶋淳、小野澤由里子、田中信、北市智子、冨江晃、川上巧、世古口悟、服部武司、鎌田和浩、中村英樹、佐藤秀樹、奥山祐右、吉田憲正、八木信明、吉川敏一 消化器医学2010, vol8, 101-104 アークメディア
食道・胃ESDの偶発症としての消化管狭窄症例の検討 戸祭直也、鎌田和浩、吉田憲正 Plvs vltre ESD!さらなる挑戦〜消化管ESDの課題と展望〜,P131-136 診断と治療社
当院において内視鏡的粘膜下層剥離術を施行した胃未分化型癌の検討 第84回日本消化器内視鏡学会近畿地方会 Plvs vltre ESD!さらなる挑戦〜消化管ESDの課題と展望〜,P21-26 診断と治療社
Endoscopic Submucosal Dissection for Undifferentiated Early Gastric Cancer as the Expanded Indication Lesion Kamada K.· Tomatsuri N.· Yoshida N. Digestion 2012;85:111–115  

大腸ポリープ・早期大腸癌に対する内視鏡的治療

大腸ポリープ(大腸腺腫)

大腸にできる隆起性の病変を一般に大腸ポリープといいます。その大きさは数mm程度から4cm以上までいろいろありますが、成因から分類すると過形成、炎症性、腫瘍性にわかれます。大腸ポリープのうち8割以上は腫瘍性のものであり、大腸腺腫といいます。これらを放置しておくと少しずつ大きくなり、なかには一部が癌化するといわれています。自覚症状はほとんどありませんが、ある程度の大きさになると便が接触することにより少しずつ出血することがあります。ほとんどの大腸ポリープは大腸内視鏡検査にて切除することが可能です。切除する時には痛みは全くありません。ポリープの茎の部分にスネアという金属の輪をかけて高周波の電流を流して焼き切ります。合併症は切除した部分から出血したり穿孔といって腸に穴があくことがありますが、頻度は極めてまれなものであり、患者さまに十分な説明を行い、同意を得たうえで、施行しております。ポリープ切除後は、約1週間は消化のよい、柔らかなものをたべていただき、アルコールや刺激の強いものを避けるようにして、合併症を防ぐようにしています。

早期大腸癌

早期大腸癌とは、粘膜内もしくは粘膜下層に癌がとどまっているものと定義されています。早期大腸癌は、形態より分類すると隆起型と表面型にわかれます。隆起型は大腸ポリープと同じような形態をしており、表面性状、病変の緊満感、可動性の有無などで、ある程度は判別できますが、最終的に内視鏡で切除して、顕微鏡検査ではじめて早期大腸癌であるとわかることがしばしばあります。一方、表面型は平坦な隆起、あるいは、浅い陥凹病変として認識されます。表面型病変は、比較的小さい病変でも粘膜下層に浸潤していることもあり、早期発見・早期治療が特に重要となります。粘膜内にとどまる早期のがんは、内視鏡的に切除することで完全に治癒しますが、粘膜下層にまで拡がっていれば、リンパ節転移の危険性が10%前後生じるため、内視鏡的に切除できても、最終的に追加外科的治療が必要となることがあります。治療の方法としては、病変部の粘膜下に局注液を注入し、粘膜部分を含む膨隆を形成し、スネアをかけて高周波電流にて切除する内視鏡的粘膜切除術(Endoscopic mucosal resection:EMR)が中心です。合併症はポリープ切除と同様に、切除した部分から出血したり穿孔といって腸に穴があくことがありますが、頻度は極めてまれなものであり、患者さまに十分な説明を行い、同意を得たうえで、施行しております。大きさが20㎜を超える大きな腫瘍性病変や、以前の内視鏡治療後の遺残・再発症例に対しては内視鏡的大腸粘膜下層剥離術(Endoscopic submucosal dissection:ESD)を導入し、病変部を取り残しなく一括切除できるように努めています。

切除不能進行大腸癌に対する全身化学療法

切除不能進行大腸癌の化学療法においては、病状や患者さまの生活状況を考慮して、標準化学療法のなかから治療法を選択しています。経口フッ化ピリミジン系抗癌剤を中心としたレジメンにイリノテカン、オキサリプラチンを併用したFOLFOX,FOLFIRI,Xelox療法などに、抗血管内皮細胞増殖因子(VEGF)ヒト化モノクローナル抗体であるベバシズマブや抗ヒト細胞増殖因子受容体(EGFR)モノクローナル抗体のセツキシマブやパニツムマブという分子標的薬剤を積極的に併用し、抗腫瘍効果と生命予後の改善を目指して治療を行っています。

炎症性腸疾患の診断と治療

潰瘍性大腸炎

潰瘍性大腸炎は大腸の粘膜に慢性的な潰瘍やびらんをきたす原因不明の腸炎です。おもな症状は血便、下痢、腹痛で、病変部位は直腸を中心に、大腸全体に広がります。診断には、血液検査、便検査、大腸内視鏡検査、注腸造影検査、腹部CT検査を組み合わせて診断を行います。急性増悪期の潰瘍性大腸炎の治療は、メサラジンや副腎皮質ステロイドホルモンを内服することが中心でした。最近では、あらたな薬物放出制御機構をもつ新規メサラジン製剤やメサラジンの注腸製剤、坐剤を用いて、軽症から中等症の症例には外来通院治療がスムーズに継続できるようにしています。一方、中等症から重症の症例やステロイド治療に抵抗したり、依存性を呈する難治性の症例には、早期から血液成分除去療法、新しい免疫調節剤であるタクロリムスや生物学的製剤であるインフリキシマブ、アダリムバムを導入して積極的に治療をおこなっています。内科的治療に反応しない激症例や長期にわたる炎症の持続にともなう炎症性発癌をきたした症例では、外科と相談のうえ、適切な外科的治療をすすめております。

クローン病

クローン病は10歳代後半から20歳代後半に好発し、主として小腸や大腸にみられる原因不明の肉芽腫性炎症性病変です。おもな症状は下痢、腹痛、体重減少、発熱です。4〜6割の症例に痔ろうや肛門周囲膿瘍などの肛門部病変を認めます。また、時に、腸閉塞や大出血をきたし外科的治療が必要になることもあります。クローン病の内科的治療は栄養療法と薬物療法があります。栄養療法は主として成分栄養剤を用い、栄養障害の改善と腸管安静を目標に行います。仕事や学業に忙しい方のために、持続注入ポンプを用いた夜間経鼻的持続注入法や、内視鏡的に造設した胃ろう部分からの注入法もとりいれています。一方、薬物療法はメサラジンを継続的に投与する他に、免疫調節剤であるアザチオプリンを併用し、炎症のコントロールを行います。急性増悪時には、一時的にステロイド投与を行うほか、生物学的製剤であるインフリキシマブ、アダリムマブを早期より導入し、積極的に治療を行っています。長期にわたる経過中に、腸管の狭窄、膿瘍形成、瘻孔形成などの腸管合併症を起こしてきます。その際には、外科と相談の上、患者さまの生活の質を向上させるために必要な外科的治療をすすめることもあります。炎症性腸疾患は最近、小児科の患者さまもふえてまいりました。小児科、小児外科とも連絡をとりながら、共同で最適な治療法を提供できるように努めております。

機能性腸疾患に対する診断と治療

腹痛や腹部不快感、便通異常を主症状とした消化器症状が持続、または緩解と増悪を繰り返し、血液検査や下部消化管検査では異常を認めない、いわゆる機能性消化管障害の代表的疾患である過敏性腸症候群(Irritable bowel syndrome:IBS)に罹患されている方が増えています。当科では、IBSの治療ガイドラインに沿い、それぞれの病型にあわせて、消化管運動機能調節薬、高分子重合体、選択的5-HT3受容体拮抗薬などを積極的に組み合わせ処方するとともに、精神的側面のケアに関しては心療内科に紹介し、治療をお願いしております。

総胆管結石の内視鏡的治療

胆嚢内の結石が総胆管内に胆嚢管を経由して移動し発症する場合と、総胆管内で生成された結石が原因で発症する場合とがあります。いずれの場合もこれらの結石が総胆管を閉塞し、それに伴い胆汁の十二指腸への流れを阻害することにより発症します。主な症状としては、胆汁の流れを阻害することで生じた胆汁うっ滞による黄疸、結石の嵌頓と総胆管の閉塞による胆道内圧の上昇に伴う疼痛(主に右季肋部や心窩部)があります。閉塞・胆汁うっ滞が長期にわたると、胆管内に感染を合併し発熱を起こし、重篤な状態になることもあります。時に、乳頭部(十二指腸の出口)に嵌頓し膵管閉塞をおこすと急性膵炎を合併することもあります(胆石膵炎)。
治療法は、従来、外科的に開腹下での治療が唯一の治療法でありました。しかし、近年の内視鏡技術の進歩と処置具の発達により外科的手術はほとんど行われなくなり、内視鏡的に結石を取り除く治療が取って代わるようになっています。内視鏡による総胆管へのアプローチの方法としては、肝臓を穿刺し胆管へアプローチする方法(経皮経肝的胆管ドレナージPTBD → 胆管内視鏡PTCS)と、十二指腸乳頭よりアプローチする方法(内視鏡的胆膵管造影ERCP→乳頭切開結石除去EST-L,乳頭拡張結石除去EPBD-L)があります。当施設では、特に後者の方法を得意としており約98%の総胆管結石が十二指腸乳頭よりの治療で治癒しています。結石が巨大な場合は体外衝撃波を併用した治療も行われます。

  • 経皮経肝的胆管鏡下に結石を除去しています。

  • 総胆管内に多数の結石有り、十二指腸乳頭より内視鏡的に結石を全て除去しました。

閉塞性黄疸の内視鏡治療

肝臓では胆汁が一日に500cc〜1000cc作られています。その胆汁の通り道(胆管)が腫瘍や外からの圧排などにより、狭窄したり閉塞することで黄疸が出現した状態を閉塞性黄疸といいます。これは放置すると肝腎障害、出血傾向が出現し、炎症が加わると命に関わるような急性化膿性胆管炎、敗血症を引き起こします。
これには早急な減黄治療(ドレナージ術)が必要です。減黄減圧処置としては内視鏡的逆行性胆管ドレナージ(ERBD)、経皮経肝胆道ドレナージ(PTBD)、経皮経肝胆嚢ドレナージ(PTGBD)などの方法があり、迅速かつ確実に行う事が大切です。

膵臓癌の治療

膵臓癌は最も予後の不良の癌といわれ早期発見が困難であり、症状が出て受診した時には切除不能の進行癌になっていることが少なくありません。全国で毎年約28,000人の患者さまがこの病気で亡くなり、2011年の全国集計では全癌死亡者数中、男性は1位肺癌、以下胃癌、大腸癌、肝臓癌に次いで5位、女性は1位大腸癌、以下肺癌、胃癌に次いで4位(5位は乳癌)にまでに増加してきています。当院での患者さまは紹介が多いですが、紹介後なるべく早期にヘリカルCT、腹部超音波検査、MRCP(磁気共鳴胆管膵管造影法)、EUS(超音波内視鏡検査)、ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影検査)などを併用し診断、治療を行なっています。当院では年間40人前後の新規の膵臓癌の方の治療を行っています。膵臓は胃の背側に位置し、癌が発生しても診断が難しいうえに症状に乏しく、進行した状態で見つかることが多いのが現状です。治療は、外科的な手術による切除が原則です(膵頭部癌では膵頭十二指腸切除術、膵体部や尾部の癌では膵体尾部切除術が行われます)が、残念ながら6割以上の患者さまが手術不能の状態で発見されます。手術不能例で閉塞性黄疸のある場合は、内視鏡的胆管ドレナージによる黄疸の治療がおこなわれます。以前は膵臓癌に対しては効果的な抗癌剤がなく手術不能の患者さまに対する有効な治療法がありませんでした。しかし、現在は比較的効果的な抗癌剤の出現により、そのような患者さまに対しても抗癌剤による治療が積極的に行われるようになりました。抗癌剤治療は通常初回のみ入院で行い、その後は日常生活を送りながら外来での継続治療が可能になっています。

C型慢性肝炎のインターフェロン治療

現在、日本中でおよそ200万人のC型肝炎患者さまがいると言われています。そのほとんどの人が自覚症状がないまま静かに病気が進行し、肝硬変さらには肝臓癌になってしまうおそれがあります。インターフェロン治療はC型肝炎ウイルスを駆除する唯一の方法です。治療方法の選択に際してはウイルスのセロタイプ、ウイルス量ならびに患者さまの年令や線維化の程度などを考慮して、ガイドラインにのっとった形で治療方針を決めています。現在はペグインターフェロン(週1回投与)と抗ウイルス薬の併用が主流となっています。また医療費助成制度を受けることができます。 当科における治療成績は、セロタイプⅠ型、高ウイルス量の人でウイルスが消えて肝炎が治る治癒率は45.5%、セロタイプⅡ型では治癒率は77.8%です。

C型慢性肝炎に対する初回治療ガイドライン
  Genotype 1 Genotype 2
高ウイルス量
5.0 Log IU/ml以上
  • ・ペグインターフェロン 24週間
    +リバビリン 24週間
    +テラプレビル 12週間
  • ・ペグインターフェロン
    +リバビリン 24週間
  • ・インターフェロン
    +リバビリン 24週間
低ウイルス量
5.0 Log IU/ml未満
  • ・インターフェロン 24週間
  • ・ペグインターフェロン 24〜48週間
  • ・インターフェロン 8〜24週間
  • ・ペグイントロン 24〜48週間

肝臓癌の内科治療

肝臓癌はB型、C型肝炎ウイルス、アルコール、脂肪肝などが原因となる慢性肝炎あるいは肝硬変を背景に発生するという特徴があります。つまり、癌ができやすい人が限られてくるのです。このような肝臓癌発生の高リスク者は血液検査や腹部超音波検査、CT、MRI検査などを定期的に行う必要があります。残念ながら癌がでてきた場合の内科的治療としては、①腹部超音波を用いた局所治療②カテーテルを用いた治療③内服化学療法があります。

腹部超音波を用いた局所治療

・経皮的エタノール局所注入療法(PEIT)

1cm〜3cmぐらいの癌が治療適応になります。腹部超音波でみながら、肝腫瘍内に注射針を刺入しエタノールを注入します。安全かつ副作用の少ない治療法です。2cmの癌で約2週間の入院となります。

・ラジオ波焼灼術(RFA)

平成16年4月より保険適応になりました。2cm〜4cmぐらいの癌が治療適応になります。入院期間はエタノール注入療法より短く3日程度です。

ラジオ波焼灼療法(RFA)

カテーテルを用いた治療

・肝腫瘍動脈塞栓療法(TACE)

3cm以上で見つかった場合や一度に複数個の癌が見つかった場合に適応になります。肝臓癌を栄養する動脈までカテーテルを進め抗癌剤を入れ、動脈の血流を遮断し、腫瘍細胞を壊死させます。PEITやRFAに比べて肝臓に対する負担がやや大きい治療で、治療後およそ1週間熱がでます。

肝動脈塞栓療法(TACE)
※画像をクリックすると拡大します。

  • 肝動脈造影を行い、腫瘍の栄養動脈2本を同定する。

  • カテーテルを栄養動脈に挿入し、塞栓療法を行う。

  • 治療後の造影で腫瘍濃染の消失を確認する。

・リザーバ―肝動注療法

これまでの治療が効きにくくなったり、癌が肝臓内に広範囲に広がった場合、カテーテルを埋め込んで持続的に抗癌剤を肝臓の中に注入します。最初は約1ヶ月間入院して治療を行い、その後は外来で2週間に1回の点滴を続けます。

・内服化学療法(ネクサバール)

分子標的治療薬といわれる薬で、腫瘍細胞の増殖と血管新生を阻害します。肝外に転移がある症例、他の内科治療で対応が難しい症例が対象となりますが、手足症候群、高血圧、肝障害、出血などの副作用に注意が必要です。

どの治療を選択するかは、肝炎の状態や年令、腫瘍の進行度などを総合して決めます。肝臓癌は自覚症状が乏しく、自分では気がつかないことがほとんどです。また、一度できてしまうと繰り返し再発しやすく、何回か治療をする必要があります。B型肝炎やC型肝炎にかかっている人、一日3合以上お酒を飲む人、脂肪肝がある人は肝臓専門外来を受診して定期的に検査を受けてください。