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消化器内科

より詳しい治療方法の説明

早期食道癌、早期胃癌の内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)

適応と利点

食道癌も胃癌も内視鏡検査が普及して早期発見できる症例が増えてきました。早期発見できれば、体への負担(侵襲)がより少ない内視鏡的粘膜下層剥離術(ESDと略します)が可能となります。以前はEMR(粘膜切除術)といって切開スネアー(輪っかのようなもの)にて切除する方法が行われていましたが、最近はESDによる治療が主体になっています。
ESDとは、食道や胃に発生する早期癌や前癌病変(腺腫や異型上皮)などの腫瘍に対して、内視鏡を用いて、食道や胃の内側から表面の腫瘍を高周波電流(電気メス)にて切除し剥がし取っていく方法(図1)です。最大の利点は、好きな形や大きさに切除できることです。したがって、癌の取り残しによる再発を防ぐために、病変をひと回り大きく切除することができます。また、術後の痛みがほとんどなく、切除翌日には歩行ができ、術後2日目には食事開始が可能となります。ESDは胃や食道の内側から内視鏡で表面を剥がし取る治療ですので、術後も胃や食道の容量が小さくならず、ほぼ元通りに残るため、従来通りの食生活が保たれます。ESD治療に最もふさわしい病変は、胃癌の場合、治療ガイドラインに基づけば、『潰瘍を伴わない粘膜内病変』になりますが、上記条件に必ずしも一致しなくとも『適応拡大病変』であればESDを行えます。実際にESDが可能かどうかは病変の大きさ、深さ、部位、組織型(癌のタイプ)や患者さま自身の全身状態などから判断しますので、担当医と相談していただく必要があります。食道癌も同様に、原則、粘膜内にとどまる浅い病変が治療の適応になりますが、手術と比べると侵襲(体への負担)が軽くて済みますので、年齢や体力、併存する病気によっては、少し適応を広げて治療の対象になる場合もありますので、やはり担当医としっかり相談いただくことになります。当院では色素内視鏡や超音波内視鏡などの従来からある検査に加え、NBI(Narrow Band Imaging)といわれる画像強調観察、NBIを用いた拡大観察などの最新の特殊検査により的確な術前診断を行い、外科での手術(開腹、腹腔鏡、ロボット支援下手術)が必要なのか、消化器内科でのESDで根治(治癒)可能かを決定します。

図1

ESDの実際(図2)

8日間の入院を要します。これらの治療を行う際、点滴を行った上、血圧や呼吸状態を観察しながら鎮静剤、鎮痛剤(麻酔)を使用します。当日は、トイレ歩行以外は控えていただきます。腹痛、胸痛、発熱、吐下血がなければ翌日から歩行は可能で、その後数日間の点滴、内服と絶食を必要とします。切除した病変の病理組織学的結果は、深達度(癌の深さ)、切除断端(取り残しなく切除できているか)などを詳細に診断した上で、退院前後に担当医より説明を受けることになります。内視鏡治療のみで完治(治癒)と判定されるのが理想ですが、もし残念ながら非治癒と判定された場合は、原則、後日再入院の上、追加の内視鏡治療や外科的手術が必要になることもあります。治療がうまくいった後も、初めは2〜3ヶ月後に一度、その後は6〜12ヶ月毎の定期的な内視鏡検査を必ず受けていただきます。

  • 軽度隆起している胃癌があります。

  • インジゴカルミン(検査用の色素)をかけると胃癌が浮かび上がります。その周囲にマーキング(印をつけます)を行い、切除範囲を決めます。

  • マーキングの周囲を浅く切開します。

  • 周囲から病変の剥離を行っていきます。

  • 剥離が終了し、癌が取れました。

  • 剥離した癌の病変を回収し、病理検査に提出します。

合併症

ESDの合併症には主として、穿孔と出血があります。穿孔(およそ3%くらい)は切除部位の消化管壁に穴があいてしまうことで、腹膜(や胸膜)に炎症が起きると、腹痛(胸痛)、発熱などを伴うことがあります。ほとんどのケースで、穿孔が起きても、穿孔部位の修復も内視鏡的に行いますが緊急の外科手術(0.08%)を必要とすることがごく稀にあります。出血に関しては、切除中にみられる場合と切除後しばらくしてからみられる場合があります。そのほとんどは内視鏡を用いて止血できますが、ごく稀には輸血(およそ1%くらい)や緊急手術を要することがあります。出血や穿孔などの合併症が生じた場合は絶食や入院期間が延長される場合があります。その他に症例によっては他の合併症が起こり得ますので、術前に担当医より十分、説明を受けて下さい。もし合併症が起きなければ、デスクワーク程度の仕事なら、通常は退院翌日にも可能です。

当院における実績

近年、ESDはその高い治療効果と侵襲性の低さ(身体の負担が小さい)から増加傾向にあります。当院でも保険適応以前の2002年から導入して以来、現在(2020年12月末)までに食道で675病変、胃では2595病変のESD症例を経験しています。これらの症例数(図3、図4)は京都府下では最多で、さらに、西日本でもトップクラスの実績です。また、学術面においても、日本消化器内視鏡学会をはじめとした学会でのシンポジウム(主題)において演題が多数採択(表1)されており、加えてESDについての論文発表も精力的に行っています。(表2)。
入院にはあらかじめ、一定のスケジュールが決まったクリニカルパスを導入し、患者さまには説明用の冊子を渡し、医師だけでなく、看護師、薬剤師、栄養士にいたるまでがチームを構成し、治療に際し、インフォームドコンセントに努めています。また週に1回、内視鏡治療症例についての検討会を行い、チーム医療としてESDを行っています。従って、担当医が誰であってもチームで治療を行うため、技量の差は出ませんので、ご安心下さい。定期的な内視鏡検査による早期発見が可能となりつつある現在、低侵襲な内視鏡治療としてのESDの担う役割は大きく、さらなる治療成績の向上と安全性の確保を目指しています。

図3 【食道ESD】

図4 【胃ESD】

表1:『学会の演題発表(シンポジウムなどの主題採択分のみ)』

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日付 学会 演題名 演者
2007.09.29 第79回日本消化器内視鏡学会近畿地方会 当院におけるチーム医療としてのESDパス 戸祭直也、八木信明、藤本荘太郎
2009.09.19 第83回日本消化器内視鏡学会近畿地方会 当院の食道ESDの成績、特にm3、sm1癌症例についての検討 戸祭直也、鎌田和浩、吉田憲正
2009.10.16 第78回日本消化器病内視鏡学会総会(JDDW2009) 内視鏡関連手技における抗血栓薬のマネジメント 戸祭直也、鎌田和浩、吉田憲正
2010.03.13 第84回日本消化器内視鏡学会近畿地方会 抗血栓薬内服患者に対し上部消化管ESDを安全に行うために〜出血性偶発症と血栓性偶発症の間で〜 戸祭直也、鎌田和浩、吉田憲正
2010.05.15 第79回日本消化器内視鏡学会総会 未分化型早期胃癌に対するESD適応拡大の妥当性 八木信明、戸祭直也、内藤裕二
2010.10.02 第85回日本消化器内視鏡学会近畿地方会 ダブルスコープ法を用いた胃ESDの経験 鎌田和浩、戸祭直也、吉田憲正
2011.02.05 第94回日本消化器病学会近畿支部例会 上部消化管ESDの周術期におけるチーム医療 戸祭直也、鎌田和浩、鈴木隆裕、吉田憲正
2011.02.18 第7回日本消化管学会総会 当院において内視鏡的粘膜下層剥離術を施行した胃未分化型癌の検討 鎌田和浩、戸祭直也、吉田憲正
2011.02.19 第7回日本消化管学会総会 食道・胃ESDの偶発症としての消化管狭窄症例の検討 戸祭直也、鎌田和浩、鈴木隆裕、吉田憲正
2011.10.01 第87回日本消化器内視鏡学会近畿地方会 胃ESD困難部位における2ndデバイスとしての鋏型ESDナイフの有用性 戸祭直也、鈴木隆裕、吉田憲正
2012.10.13 第84回日本消化器病内視鏡学会総会(JDDW2012) 食道表在癌ESD症例長期成績の検討 戸祭直也、鎌田和浩、八木信明
2012.11.10 第89回日本消化器内視鏡学会近畿地方会 残胃癌に対するESDにおける戦略 川上巧、戸祭直也、吉田憲正
2013.02.16 第99回日本消化器病学会近畿支部例会 彎曲喉頭鏡を用いた咽頭ESDの有用性 戸祭直也、鈴木隆裕、吉田憲正、松井雅裕
2013.09.28 第98回日本消化器病学会近畿支部例会 当院で経験した十二指腸憩室出血例の検討 山田真也、鈴木隆裕、戸祭直也、吉田憲正
2013.11.16 第91回日本消化器内視鏡学会近畿支部例会 当院における高齢者に対する時間外緊急内視鏡検査の現況 山田真也、戸祭直也、吉田憲正
2013.12.06 第41回日本潰瘍学会 PPIとポラプレジンク併用による胃ESD後潰瘍治癒と増殖因子 吉田憲正、川上 巧、鈴木隆裕、戸祭直也
2014.02.22 第100回日本消化器病学会近畿支部例会 他臓器癌合併を念願においた食道表在癌治療戦略 中野貴博、戸祭直也、山田真也、吉田憲正
2014.04.24 第100回日本消化器病学会総会 機能性ディスペプシア患者に対するacotiamideの使用経験 山田真也、鈴木隆裕、吉田憲正
2014.06.21 第92回日本消化器内視鏡学会近畿地方会 当院における食道バレット腺癌の内視鏡的切除症例の検討 戸祭直也,山田真也,吉田憲正
2014.10.04 第101回日本消化器病学会近畿支部例会 表在型食道癌ESD後予後のさらなる改善にむけて〜他臓器癌発生に留意した経過観察の重要性について〜 戸祭直也,山田真也,吉田憲正
2014.10.25 第88回日本消化器内視鏡学会総会 早期胃癌ESD後除菌群における2次胃癌についての検討 寺崎慶,山田真也,吉田憲正
2014.10.25 第88回日本消化器内視鏡学会総会 上部消化管出血患者に対する治療介入予測はどこまで可能か 山田真也、戸祭直也、吉田憲正
2014.11.15 第93回日本消化器内視鏡学会近畿支部例会 上部消化管出血症例における内視鏡的止血困難例についての検討 山田真也、戸祭直也、吉田憲正
2015.02.21 消化器病学会第102回近畿支部例会 初回緊急上部消化管内視鏡検査にて原因不明とされた症例の転帰についての検討 山田真也、鈴木隆裕、戸祭直也、吉田憲正
2015.04.23 第101回日本消化器病学会総会 当科における表在型食道バレット腺癌およびバレット食道診療の現状 戸祭直也,山田真也,吉田憲正
2015.06.20 第94回日本消化器内視鏡学会近畿地方会 早期胃癌ESD後除菌療法後、異時性再発胃癌の臨床的特徴 山田真也,戸祭直也,吉田憲正
2015.09.26 第103回日本消化器病学会近畿支部例会 当院健診受診者における生活習慣とバレット食道の関連について 榊田智喜、山田真也、鎌田和浩、吉田憲正
2015.11.07 第95回日本消化器内視鏡学会近畿地方会 当院における、抗血栓療法施行症例に対する早期胃癌ESDの現状 吉田寿一郎、山田真也、吉田憲正
2016.04.22 第102回日本消化器病学会総会 H.Pylori除菌療法におけるボノプラザンの有用性 山田真也、戸祭直也、吉田憲正
2016.06.11 第96回日本消化器内視鏡学会近畿地方会 (追加発言)彎曲型咽頭鏡を用いた頸部食道表在癌に対するESD 山田真也、戸祭直也、吉田憲正
2016.11.05 第58回日本消化器病学会大会 京都分類 胃癌リスクスコアの妥当性について 山田真也、戸祭直也、吉田憲正
2016.11.26 第97回日本消化器内視鏡学会近畿地方会 Narrow Band Imaging(NBI)観察で拾い上げが困難であった表在型食道癌の検討 吉田拓馬、戸祭直也、浦田洋二、吉田憲正
2017.02.25 第106回日本消化器病学会近畿支部例会 当院におけるNSAIDs/LDA関連の出血性胃十二指腸潰瘍の現状 梶原真理子、戸祭直也、川上巧、山田真也
2017.04.20 第103回日本消化器病学会総会 24時間インピーダンス・pHモニタリングを用いたPPI抵抗性GERD治療効果予測の可能性 山田真也、鈴木隆裕、吉田憲正
2017.09.23 第107回日本消化器病学会近畿支部例会 当院における十二指腸腫瘍に対する腹腔鏡内視鏡共同手術(LECS)の経験 山田真也,戸祭直也,吉田憲正,塩飽保博
2018.04.20 第104回日本消化器病学会総会 PPI抵抗性GERDに対するvonoprazanの有用性と治療反応例についての検討 山田真也、戸祭直也、吉田憲正
2018.05.26 第100回日本消化器内視鏡学会近畿地方会 好酸球性食道炎内視鏡像の典型像と非典型像.ワークショップ 戸祭直也、山田真也、土井俊文、川上 巧、吉田憲正
2018.06.03 米国消化器病週間(DDW2018) Different risk factors between early and late cancer recurrences in patients with no additional treatment after non-curative endoscopic submucosal dissection for early gastric cancer Shinya Yamada, Norimasa Yoshida, Naoya Tomatsuri et al.
2019.02.23 第110回日本消化器病学会近畿支部例会 当院におけるNSAIDs/LDA関連の出血性胃十二指腸潰瘍の現状 山田真也、小林玲央、戸祭直也、吉田憲正
2019.02.23 第110回日本消化器病学会近畿支部例会 好酸球性食道炎33症例の検討 戸祭直也、山田真也、吉田憲正、岸本悦子
2019.05.21 米国消化器病週間(DDW2019) Is endoscopic submucosal dissection needed for stage IA gastric cancer in super-elderly patients? Shinya Yamada, Norimasa Yoshida, Naoya Tomatsuri et al.
2019.10.05 第111回日本消化器病学会近畿支部例会 早期胃癌ESD後非治癒切除後経過観察症例の再発における脈管侵襲の意義 山田真也、八田和久、後藤田卓志、吉田憲正
2020.12.19 第105回日本消化器内視鏡学会近畿支部例会 食道扁平上皮癌ESD症例におけるpSM2の長期経過についての検討 中野貴博、戸祭直也、山田真也、木村浩之
表2

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タイトル 著者 掲載誌 出版社
内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)による全周切除にて完全切除し得たBarrett腺癌の1例 八木信明、内藤裕二、戸祭直也、加藤元一 G.I.Research 18(1): 63-67 2010 先端医学社
当院の上部消化管ESD習得への教育について-トレイニーの立場より 寄木浩行、戸祭直也、間嶋淳、小野澤由里子、田中信、北市智子、冨江晃、川上巧、世古口悟、服部武司、鎌田和浩、中村英樹、佐藤秀樹、奥山祐右、吉田憲正、八木信明、吉川敏一 消化器医学2010, vol8, 101-104 アークメディア
食道・胃ESDの偶発症としての消化管狭窄症例の検討 戸祭直也、鎌田和浩、吉田憲正 Plvs vltre ESD!さらなる挑戦〜消化管ESDの課題と展望〜,P131-136 診断と治療社
当院において内視鏡的粘膜下層剥離術を施行した胃未分化型癌の検討 第84回日本消化器内視鏡学会近畿地方会 Plvs vltre ESD!さらなる挑戦〜消化管ESDの課題と展望〜,P21-26 診断と治療社
Endoscopic Submucosal Dissection for Undifferentiated Early Gastric Cancer as the Expanded Indication Lesion Kamada K.· Tomatsuri N.· Yoshida N. Digestion 2012;85:111–115  
Different risk factors between early and late cancer recurrences in patients without additional surgery after noncurative endoscopic submucosal dissection for early gastric cancer Takahashi Y, Takeuchi T, Kojima Y, Nagami Y, Ominami M, Uedo N, Hamada K, Suzuki H, Oda I, Miyaoka Y, Yamanouchi S, Tokioka S, Tomatsuri N, Yoshida N, Naito Y, Nonaka T, Kodashima S, Ogata S, Hongo Y, Oshima T, Li Z, Shibagaki K, Oikawa T, Tominaga K, Higuchi K. J Gastroenterol Hepatol. 2018 Jul;33(7):1341-1346  
胃(消化管原発)濾胞性リンパ腫 山田真也、吉田憲正、浦田洋二 日本臨床 消化管症候群第3版, P351, 2019  
LECS-Assisted Open Partial Gastrectomy for an Ulcerative GIST in an Elderly Patient Okano K, Komatsu S, Tsuji R, Tomatsuri N, Asaeda K, Shiraga A, Ohta A, Tanaka S, Kumano T, Imura K, Shimomura K, Ikeda J, Taniguchi F, Shioaki Y. Gan To Kagaku Ryoho. 2019 Dec;46(13):2577-2579.  
Clinical Outcomes of Vonoprazan-Treated Patients after Endoscopic Submucosal Dissection for Gastric Neoplasms: A Prospective Multicenter Observation Study. Ishida T, Dohi O, Yamada S, Yasuda T, Yamada N, Tomie A, Tsuji T, Horii Y, Majima A, Horie R, Fukui A, Zen K, Tomatsuri N, Yagi N, Naito Y, Itoh Y. Digestion 2020; Jun 25;1-11. doi: 10.1159/000507807. Online ahead of print.  
食道がん内視鏡治療 解説(最新動向&トピックス、セカンドオピニオンとるべきケース) 戸祭直也 手術数でわかるいい病院2020(朝日新聞出版)  
病院の実力京都編 胃がん 負担少ないESD 戸祭直也 読売新聞2020年10月25日  
咽頭・食道内視鏡診療の最前線 戸祭直也 京都消化器医会会報第36号51-66, 2020.6  

大腸ポリープ・早期大腸癌に対する内視鏡的治療

大腸ポリープ(大腸腺腫)

大腸にできる隆起性の病変を一般に大腸ポリープといいます。その大きさは数mm程度から4cm以上までいろいろありますが、成因から分類すると過形成、炎症性、腫瘍性にわかれます。大腸ポリープのうち8割以上は腫瘍性のものであり、大腸腺腫といいます。これらを放置しておくと少しずつ大きくなり、なかには一部が癌化するといわれています。自覚症状はほとんどありませんが、ある程度の大きさになると便が接触することにより少しずつ出血することがあります。ほとんどの大腸ポリープは大腸内視鏡検査にて切除することが可能です。切除する時には痛みは全くありません。ポリープの茎の部分にスネアという金属の輪をかけて高周波の電流を流して焼き切ります。合併症は切除した部分から出血したり穿孔といって腸に穴があくことがありますが、頻度は極めてまれなものであり、患者さまに十分な説明を行い、同意を得たうえで、施行しております。ポリープ切除後は、約1週間は消化のよい、柔らかなものをたべていただき、アルコールや刺激の強いものを避けるようにして、合併症を防ぐようにしています。

早期大腸癌

早期大腸癌とは、粘膜内もしくは粘膜下層に癌がとどまっているものと定義されています。早期大腸癌は、形態より分類すると隆起型と表面型にわかれます。隆起型は大腸ポリープと同じような形態をしており、表面性状、病変の緊満感、可動性の有無などで、ある程度は判別できますが、最終的に内視鏡で切除して、顕微鏡検査ではじめて早期大腸癌であるとわかることがしばしばあります。一方、表面型は平坦な隆起、あるいは、浅い陥凹病変として認識されます。表面型病変は、比較的小さい病変でも粘膜下層に浸潤していることもあり、早期発見・早期治療が特に重要となります。粘膜内にとどまる早期のがんは、内視鏡的に切除することで完全に治癒しますが、粘膜下層にまで拡がっていれば、リンパ節転移の危険性が10%前後生じるため、内視鏡的に切除できても、最終的に追加外科的治療が必要となることがあります。治療の方法としては、病変部の粘膜下に局注液を注入し、粘膜部分を含む膨隆を形成し、スネアをかけて高周波電流にて切除する内視鏡的粘膜切除術(Endoscopic mucosal resection:EMR)が中心です。合併症はポリープ切除と同様に、切除した部分から出血したり穿孔といって腸に穴があくことがありますが、頻度は極めてまれなものであり、患者さまに十分な説明を行い、同意を得たうえで、施行しております。大きさが20㎜を超える大きな腫瘍性病変や、以前の内視鏡治療後の遺残・再発症例に対しては内視鏡的大腸粘膜下層剥離術(Endoscopic submucosal dissection:ESD)を導入し、病変部を取り残しなく一括切除できるように努めています。

切除不能進行大腸癌に対する全身化学療法

切除不能進行大腸癌の化学療法においては、病状や患者さまの生活状況を考慮して、標準化学療法のなかから治療法を選択しています。経口フッ化ピリミジン系抗癌剤を中心としたレジメンにイリノテカン、オキサリプラチンを併用したFOLFOX,FOLFIRI,Xelox療法などに、抗血管内皮細胞増殖因子(VEGF)ヒト化モノクローナル抗体であるベバシズマブや抗ヒト細胞増殖因子受容体(EGFR)モノクローナル抗体のセツキシマブやパニツムマブという分子標的薬剤を積極的に併用し、抗腫瘍効果と生命予後の改善を目指して治療を行っています。

炎症性腸疾患の診断と治療

潰瘍性大腸炎

潰瘍性大腸炎は大腸の粘膜に慢性的な潰瘍やびらんをきたす原因不明の腸炎です。おもな症状は血便、下痢、腹痛で、病変部位は直腸を中心に、大腸全体に広がります。診断には、血液検査、便検査、大腸内視鏡検査、注腸造影検査、腹部CT検査を組み合わせて診断を行います。急性増悪期の潰瘍性大腸炎の治療は、メサラジンや副腎皮質ステロイドホルモンを内服することが中心でした。最近では、あらたな薬物放出制御機構をもつ新規メサラジン製剤やメサラジンの注腸製剤、坐剤を用いて、軽症から中等症の症例には外来通院治療がスムーズに継続できるようにしています。一方、中等症から重症の症例やステロイド治療に抵抗したり、依存性を呈する難治性の症例には、早期から血液成分除去療法、新しい免疫調節剤であるタクロリムスや生物学的製剤であるインフリキシマブ、アダリムバムを導入して積極的に治療をおこなっています。内科的治療に反応しない激症例や長期にわたる炎症の持続にともなう炎症性発癌をきたした症例では、外科と相談のうえ、適切な外科的治療をすすめております。

クローン病

クローン病は10歳代後半から20歳代後半に好発し、主として小腸や大腸にみられる原因不明の肉芽腫性炎症性病変です。おもな症状は下痢、腹痛、体重減少、発熱です。4〜6割の症例に痔ろうや肛門周囲膿瘍などの肛門部病変を認めます。また、時に、腸閉塞や大出血をきたし外科的治療が必要になることもあります。クローン病の内科的治療は栄養療法と薬物療法があります。栄養療法は主として成分栄養剤を用い、栄養障害の改善と腸管安静を目標に行います。仕事や学業に忙しい方のために、持続注入ポンプを用いた夜間経鼻的持続注入法や、内視鏡的に造設した胃ろう部分からの注入法もとりいれています。一方、薬物療法はメサラジンを継続的に投与する他に、免疫調節剤であるアザチオプリンを併用し、炎症のコントロールを行います。急性増悪時には、一時的にステロイド投与を行うほか、生物学的製剤であるインフリキシマブ、アダリムマブを早期より導入し、積極的に治療を行っています。長期にわたる経過中に、腸管の狭窄、膿瘍形成、瘻孔形成などの腸管合併症を起こしてきます。その際には、外科と相談の上、患者さまの生活の質を向上させるために必要な外科的治療をすすめることもあります。炎症性腸疾患は最近、小児科の患者さまもふえてまいりました。小児科、小児外科とも連絡をとりながら、共同で最適な治療法を提供できるように努めております。

機能性腸疾患に対する診断と治療

腹痛や腹部不快感、便通異常を主症状とした消化器症状が持続、または緩解と増悪を繰り返し、血液検査や下部消化管検査では異常を認めない、いわゆる機能性消化管障害の代表的疾患である過敏性腸症候群(Irritable bowel syndrome:IBS)に罹患されている方が増えています。当科では、IBSの治療ガイドラインに沿い、それぞれの病型にあわせて、消化管運動機能調節薬、高分子重合体、選択的5-HT3受容体拮抗薬などを積極的に組み合わせ処方するとともに、精神的側面のケアに関しては心療内科に紹介し、治療をお願いしております。

総胆管結石の内視鏡的治療

胆嚢内の結石が総胆管内に胆嚢管を経由して移動し発症する場合と、総胆管内で生成された結石が原因で発症する場合とがあります。いずれの場合もこれらの結石が総胆管を閉塞し、それに伴い胆汁の十二指腸への流れを阻害することにより発症します。主な症状としては、胆汁の流れを阻害することで生じた胆汁うっ滞による黄疸、結石の嵌頓と総胆管の閉塞による胆道内圧の上昇に伴う疼痛(主に右季肋部や心窩部)があります。閉塞・胆汁うっ滞が長期にわたると、胆管内に感染を合併し発熱を起こし、重篤な状態になることもあります。時に、乳頭部(十二指腸の出口)に嵌頓し膵管閉塞をおこすと急性膵炎を合併することもあります(胆石膵炎)。
治療法は、従来、外科的に開腹下での治療が唯一の治療法でありました。しかし、近年の内視鏡技術の進歩と処置具の発達により外科的手術はほとんど行われなくなり、内視鏡的に結石を取り除く治療が取って代わるようになっています。内視鏡による総胆管へのアプローチの方法としては、肝臓を穿刺し胆管へアプローチする方法(経皮経肝的胆管ドレナージPTBD → 胆管内視鏡PTCS)と、十二指腸乳頭よりアプローチする方法(内視鏡的胆膵管造影ERCP→乳頭切開結石除去EST-L,乳頭拡張結石除去EPBD-L)があります。当施設では、特に後者の方法を得意としており約98%の総胆管結石が十二指腸乳頭よりの治療で治癒しています。結石が巨大な場合は体外衝撃波を併用した治療も行われます。

  • 経皮経肝的胆管鏡下に結石を除去しています。

  • 総胆管内に多数の結石有り、十二指腸乳頭より内視鏡的に結石を全て除去しました。

閉塞性黄疸の内視鏡治療

肝臓では胆汁が一日に500cc〜1000cc作られています。その胆汁の通り道(胆管)が腫瘍や外からの圧排などにより、狭窄したり閉塞することで黄疸が出現した状態を閉塞性黄疸といいます。これは放置すると肝腎障害、出血傾向が出現し、炎症が加わると命に関わるような急性化膿性胆管炎、敗血症を引き起こします。
これには早急な減黄治療(ドレナージ術)が必要です。減黄減圧処置としては内視鏡的逆行性胆管ドレナージ(ERBD)、経皮経肝胆道ドレナージ(PTBD)、経皮経肝胆嚢ドレナージ(PTGBD)などの方法があり、迅速かつ確実に行う事が大切です。

膵臓癌の治療

膵臓癌は最も予後の不良の癌といわれ早期発見が困難であり、症状が出て受診した時には切除不能の進行癌になっていることが少なくありません。全国で毎年約28,000人の患者さまがこの病気で亡くなり、2011年の全国集計では全癌死亡者数中、男性は1位肺癌、以下胃癌、大腸癌、肝臓癌に次いで5位、女性は1位大腸癌、以下肺癌、胃癌に次いで4位(5位は乳癌)にまでに増加してきています。当院での患者さまは紹介が多いですが、紹介後なるべく早期にヘリカルCT、腹部超音波検査、MRCP(磁気共鳴胆管膵管造影法)、EUS(超音波内視鏡検査)、ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影検査)などを併用し診断、治療を行なっています。当院では年間40人前後の新規の膵臓癌の方の治療を行っています。膵臓は胃の背側に位置し、癌が発生しても診断が難しいうえに症状に乏しく、進行した状態で見つかることが多いのが現状です。治療は、外科的な手術による切除が原則です(膵頭部癌では膵頭十二指腸切除術、膵体部や尾部の癌では膵体尾部切除術が行われます)が、残念ながら6割以上の患者さまが手術不能の状態で発見されます。手術不能例で閉塞性黄疸のある場合は、内視鏡的胆管ドレナージによる黄疸の治療がおこなわれます。以前は膵臓癌に対しては効果的な抗癌剤がなく手術不能の患者さまに対する有効な治療法がありませんでした。しかし、現在は比較的効果的な抗癌剤の出現により、そのような患者さまに対しても抗癌剤による治療が積極的に行われるようになりました。抗癌剤治療は通常初回のみ入院で行い、その後は日常生活を送りながら外来での継続治療が可能になっています。

肝炎・肝硬変

急性肝炎

急性肝炎はA型、B型、EBウイルスほか稀なウイルス、自己免疫、薬剤、アルコールなどいろいろな原因でおこります。多くの症例が軽快しますが、慢性化や、ときに劇症化して集中治療室での治療が必要となる病気です。

慢性肝炎

肝機能障害(ASTやALT、ALPやγGTP)の異常が続く病気です。肝硬変に至ることがあり、治療を要します。一部肝炎が治療や自然に鎮静化していて、ALTの正常が続く人がいますが、経過観察は必要です。
B型肝炎:内服によるウイルス増殖を抑えるのが治療の主体です。残念ながら内服だけでB型肝炎ウイルスの駆除はむずかしく、服薬は長期におよびます。また、ときに化学療法からの再活性(肝炎が鎮静化した肝臓で、体内で潜んでいたウイルスが再度増える)や、慢性肝炎などあまり進行していない状態からの発癌など、まだまだ注意・治療の進歩が期待される領域です。
C型肝炎:2014年から、内服の直接作用型抗ウイルス薬治療(DAA治療)が治療の中心となりました。長らくC型肝炎治療の主役であったインターフェロンと異なり、DAA治療は副作用が軽微で、治療期間も8週間~12週間と短くなっています。当院では5年間でおよそ450人にDAA治療を行い、99.8%の患者さんのC型ウイルスが体内から駆除されています。しかし進行した肝硬変となると、治療の選択少なく、治療効果も落ちます。
自己免疫由来の肝炎:自己免疫性肝炎や原発性胆汁性胆管炎など稀な疾患も治療しています。本来体を守る免疫細胞が肝臓の細胞を攻撃することから起こりますが、正確な機序は不明です。採血・肝生検などで診断、免疫を抑えるステロイド、免疫を調節するウルソデオキシコール酸などで治療しますが、治療に難渋することもあります。
脂肪肝:現在大変増えてきているのは『脂肪肝』です。生活習慣病、アルコールなどを背景に肝障害をきたします。過栄養に体質が関与して起こりますが、生涯単なる脂肪肝ですむ人から、肝硬変まで進んでしまう人など様々です。現在肝臓の脂肪を直接とる薬はないため、生活習慣の改善、運動、生活習慣病の治療など患者さんの協力も大変大切です。
肝硬変の治療:肝硬変は上記の原因など、いろいろな原因で最終的に肝臓が硬くなった状態です。全く症状のない人から、脳症、腹水、食道静脈瘤など症状がでる人まで、個人個人でさまざまです。脳症のコントロールに内服、腹水のコントロールに内服や、麻酔したうえで針をさして直接除去、腹水を濃縮して返す治療などその人に必要な治療をしていきます。生活に支障がでることがあり、根気よく、定期的に治療することが多いです。

肝癌

肝臓癌の内科治療

肝臓癌は、B型、C型肝炎ウイルス、アルコール多飲、脂肪肝などが原因となる慢性肝炎あるいは肝硬変を背景に発生するという特徴があります。このような肝癌発癌の高リスク患者さんには、血液検査や腹部超音波検査、CT、MRI検査などを定期的に行う必要があります。癌がでてきた場合、外科による手術治療、または内科的治療を行います。
内科的治療としては、①腹部超音波を用いた局所治療②カテーテルを用いた治療③抗癌剤(分子標的薬治療)があります。

①腹部超音波を用いた局所治療

・経皮的エタノール局所注入療法(PEIT)

1cm〜3cmぐらいの癌が治療適応になります。肝腫瘍内に注射針を刺入しエタノールを注入します。安全かつ副作用の少ない治療法です。何回か穿刺することが必要で、2cmの癌で約2週間の入院となります。

・ラジオ波焼灼術(RFA)

平成16年4月より保険適応になりました。2cm〜4cmぐらいの癌が治療適応になります。少し針が太いため、できた部位や血小板などからできないこと、また熱による合併症が時にあります。

②カテーテルを用いた治療

・肝腫瘍動脈塞栓療法(TACE)

血流が多い肝癌で適応になります。癌を栄養する動脈までカテーテルを進め抗癌剤を入れ、動脈の血流を落として、腫瘍細胞を壊死させます。複数個でもできます。治療後発熱がでることがあり、1週間程度入院が必要です。

・リザーバ―肝動注療法

これまでの治療が効きにくくなったり、癌が肝臓内に広範囲に広がった場合、カテーテルを埋め込んで持続的に抗癌剤を肝臓の中に注入します。最初は約3週間入院して治療を行い、その後は外来で2~4週間に1回の点滴を続けます。

③分子標的薬治療

腫瘍細胞の増殖と血管新生を阻害する治療で、肝外に転移がある症例、他の内科治療で対応が難しい症例などが対象となります。最近効果が高い治療法がいくつかでてきたため、カテーテルやラジオ波と併用して行うことがあります。初回は入院となります。外来で内服、あるいは点滴治療を繰り返します。手足症候群、高血圧、蛋白尿、倦怠感など副作用に注意が必要です。

肝臓部門の論文発表
Frequently abnormal serum gamma-glutamyl transferase activity is associated with future development of fatty liver: a retrospective cohort study Hideki Fujii et al.
  • BMC Gastroenterol
  • . 2020 Jul 10;20(1):217
Idiopathic hypereosinophilic syndrome with formation of multiple liver mass lesions Tetsuhisa Ko et al.
  • Clin J Gastroenterol
  • . 2020 Oct;13(5):834-838.
Efficacy of daclatasvir plus asunaprevir in patients with hepatitis C virus infection undergoing and not undergoing hemodialysis Hideki Fujii, et al.
  • Hepatol Res
  • . 2018 Aug;48(9):746-756.
Real-world efficacy of daclatasvir and asunaprevir with respect to resistance-associated substitutions Hideki Fujii, et al.
  • World J Hepatol
  • . 2017 Sep 8;9(25):1064-1072.
学会発表(省略)