病院のご紹介

救命救急センター

センター長のご挨拶

救命救急センターの軌跡と今後

救急医療への道

院長・救命救急センター長 池田栄人

当院の救急医療への道は、施設の老朽化が進み経営状態が悪化したことの病院再建策として、平成3年に救急診療室と支援体制が構築されたことに始まります。紆余曲折を経ながらも「院内に空床のある限り、救急を断らない!」という方針で、救急車受け入れを800件から3,000件へと伸ばし一気に京都のトップランナーに躍り出ました。このことが原動力となり病院改築計画が進み平成9年A棟が完成、京都で3番目の「救命救急センター」の開設となりました。

救命救急センターとしての軌跡

新設された救命病棟30床(ICU6床を含む)による救急受け入れ向上により、平成11年には総患者数24,000人、救急車受け入れ3,742件に達し、平成15年には救急車受け入れ4,677件、平成28年には救急車受け入れ7,750台に達しております。
平成18年には脳死下臓器提供を全国43例目として行い、現在まで2例の脳死下臓器移植医療に貢献しました。平成24年の「祇園での集団交通事故」の際には、重症例を受け入れ緊急手術・ICU管理にて救命しました。「亀岡市篠における集団救急事故」の際にはドクターヘリ搬送で小児重症例を受け入れるなど、京都のトップランナーとしての活動をしております。
学術的には、平成15年に第87回日本救急医学会近畿地方会(会長:依田建吾)、平成23年に第103回日本救急医学会近畿地方会(会長:池田栄人)などを開催しました。また、ICLS、JPTEC、JATEC、PCEC、MCLSなどの救急研修会や京都DMAT隊員養成研修などの災害研修を定期開催し、救急・災害医療の普及啓発活動にも積極的に取り組んでおります。
平成24年にC棟が完成し院内ICU10床が開設、救命ICU6床と合わせて重症例の受け入れが一層向上することになりました。これに対し、救急外来(ER)においては、京都府立医科大学・救急医療科(太田凡教授)、京都大学初期診療・救急科(小池薫教授)によるスタッフ派遣により、更なる充実・強化に努めております。
災害医療に対しては、日本DMAT、京都府の基幹災害拠点病院、赤十字病院としての使命を有しており、平時の京都DMAT隊員養成研修会の開催や、実災害に対しては超急性期のDMATチーム、日赤救護班の派遣やこころのケア要因の派遣まで、幅広い対応体制を整えるに至っております。

今後

当院の救急医療は「ER」での外来診療、ICUを中心とした「集中治療」、ドクターカーなどの「病院前診療」、DMAT・赤十字救護班による「災害医療」を4つの柱として活動を展開していきます。一方、高齢化による近隣地域の人口減少や競合医療機関の機能増強など当院を取り巻く救急医療体制も大きく様変わりしてきました。また、地域包括ケアの時代の到来により介護・福祉との連携も重要になってきました。今後は地域包括ケア時代に適応した救急医療体制(救命救急医療と地域医療連携の一体化)をはかるため、病診・病病連携を積極的に活用した「ERのハブ化構想」実現に向けて邁進していきたいと考えています。
時代の変化に合わせながら、決して立ち止まることなく「一歩前へ!」、10年後20年後当院救命救急センターのさらなる発展を目指して充実・強化を行っていく所存でありますので、ご指導・ご鞭撻をよろしくお願いいたします。

救命救急センター長
髙階謙一郎

理念

人道と奉仕の赤十字精神に基づいて、24時間体制で真摯に救急医療に取り組み、患者さまにとって安心できる適切な医療を行います。

基本方針

  1. 地域の救急医療・災害拠点病院としての機能を全うします。
  2. 救急医療を担う者として社会的使命を自覚し、医療レベルや医療サービスの向上に努めます。
  3. 次代の救急医療を担う専門職を育成するため、関連部門において教育にも力を入れます。

救命救急センター

救命救急外来・病棟・集中治療室の3部門から構成され、高度先進医療機器による管理システムを備え、一次、二次および三次救急の重篤救急患者の救命に24時間対応しています。

ヘリコプターでの搬入や患者さまの症状により医師や看護師が同乗してドクターカーでの搬送を行うほか、早期医療や処置が行なえるよう救急隊や医療機関と適宜情報を交換するなど、経験豊かな専門スタッフが一致協力体制で臨んでいます。

救命救急センターの活動

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重症外傷診療

外傷救急疾患に対応するため当センターでは外傷初期診療プログラムを積極的に導入し、防ぎえた外傷死の減少に取り組んでいます。平成18年には当院においてJATECコースを開催しました。またスタッフも多くのコースにプロバイダーとして参加し、現在救急科部には7名のインストラクターが所属しています。救急室外来横の部屋にALSシミュレータを設置し救急対応の合間にも研修医のトレーニングができる環境を整えています。
救急外来の中には手術室も配置されており、重症外傷患者は、救急科のみならず各専門診療科からの協力のもと専門性の高い外傷治療を超早期より実施しております。特に四肢外傷においては整形外科とともに機能予後も考慮した外傷治療を展開しています。

病院前医療

交通事故などで救出・搬送に時間を要する場合消防からの要請により救命救急センターのスタッフが現場に出動します。病院前医療を理解するために平成18年よりJPTECコースを開催し現在までプロバイダーコースを定期的に開催しています。救急車2台DMATカー1台を現場出場時にも対応できるように搭載機器を整備しドクターカー運用も検討しています。

集中治療

救命救急センター専用のICUを運用しています。
救急外来と連携した重症集中治療を救急科が中心となって行っています。

小児救急診療

こどもは大人に比べて重症の病気が少ない反面、悪くなり始めるそのスピードは早く、気付いたときには重症となっているということがしばしばあります。大事なことは悪くなる前に気付いて対応することです。しかし悪くなる前のこどもを見つけだして早く治療を開始することはそれほどやさしいことではありません。
こどもの診察を日々行っていくうちに、「悪くなる気配」というものはなんとなく分かるようになってきます。しかしなんとなく分かるようになるのではまだ確実ではありません。
「悪くなる気配」や「重い症状」を把握するための一定の評価方法を取り入れて、その判断をもとに適切な初期治療を開始することが重要です(「診療の標準化」といいます)。「診療の標準化」を行うことで、誰が診療に当たっても根拠に基づいた標準的な治療ができるようになります。また、治療に当たる医師、看護師が共通の治療の流れを理解すれば治療がよりスムーズにすすみ、より良い結果に結びついていきます。
こどもを適切に評価し治療するための標準的な方法をPALSといいますが、救急部ではPALSに則った「小児救急診療の標準化」に取り組んでいます。