病院のご紹介

当院のがん診療

診療実績

院内がん登録数 悪性腫瘍の手術件数 がんに係る薬物療法のべ患者数 放射線治療のべ患者数 緩和ケア新規介入患者数
1670 915 1908 271 286

令和2年1月1日~令和2年12月31日

消化器内科

 日本で多い胃癌、大腸癌、肝臓癌などの消化器がんは、早期発見できれば、内科的治療で完治させることが可能です。
 当科では、以前より内視鏡を使ったがん治療に積極的に取り組んできました。これまで内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)により2483例の胃癌、613例の食道癌を切除しました。2018年から、食道がん放射線治療後の局所遺残再発に対する治療機器として、近畿で4施設目の導入となる光線力学療法(PDレーザー)を開始しています。
 大腸癌に対しての内視鏡的治療は、2021年度で年間81件施行しています。有茎、亜有茎性の病変や大きさが20mm以下の粘膜内癌では、内視鏡的ポリーペクトミー(EPT)、内視鏡的粘膜切除術(EMR)にて対応し、20mmを超える大きさの病変や粘膜下層への浸潤を疑う病変では内視鏡的大腸粘膜下層剥離術(ESD)を積極的に導入し、2021年度は37件施行しております。今後高齢者のがん患者数が益々増えるなかで、侵襲の少ない内視鏡治療の有効性と安全性をさらに高めたいと考えています。 切除不能進行・再発大腸癌に対しては、中心静脈ポートを挿入し、入院から外来化学療法へとスムーズに移行できるようにしています。大腸腫瘍の遺伝子変異の特性(all-ras遺伝子変異、B-RAF遺伝子変異)、抗がんに対する患者の特性(UGT1A1遺伝子多型、)、原発病巣の部位(右側大腸か左側大腸か)、患者の全身状態を参考にして、抗癌剤(5-FU,オキサリプラチン、イリノテカン、カペシタビン、TS-1など)に分子標的薬(ベバシズマブ、セツキシマブ、パニツマブ、ラムシルマブなど)を組み合わせたり、免疫チェックポイント阻害剤(ペンブロリズマブ)の導入を行っています。標準治療が不応となった場合には、京都大学病院と連携し、がん遺伝子パネル検査を導入し、新たな治療法がないかどうか検討しています。
 肝細胞癌は、ウイルス性だけでなく、非アルコール性脂肪性肝炎や糖尿病、アルコールなど生活習慣由来の肝発癌が増えています。合併症や肝機能・病気の広がりから手術治療が難しい症例は、超音波下での穿刺による局所治療(ラジオ波焼灼療法やエタノール注入療法)やカテーテルによる肝動脈塞栓術をおこないます。局所治療が困難な進行癌に対しては、最近めざましく進歩してきた分子標的薬を用いた全身化学療法を行っており、患者さんの肝機能や全身状態に適した集学的治療 を提供しています。
 膵臓癌は5年生存率が7%程度と未だに予後のきわめて悪い癌です。当院では早期発見のために、膵嚢胞、膵酵素の異常、家族歴など膵臓癌のリスクファクターを有する患者さんを短期間で定期フォローし、自覚症状がない段階で早めに異常をとらえて精密検査を行っています。胆膵系の疾患に対する内視鏡検査、治療(内視鏡的逆行性胆管膵管造影:ERCP、超音波内視鏡検査:EUS)も積極的に行っており、良性疾患も含めると近年合わせて年間700件程度に増加しています。また抗がん剤治療では従来の標準治療に加えて2019年より新たに保険収載されたがん遺伝子パネル検査を利用したがんゲノム医療も提供可能であり、消化器外科医、放射線科医、病理専門医を交えたcancer board(がん治療に関する検討会)も定期的に開催し、患者さんに最善かつ最新のがん治療を提供できるように、チーム医療で対応しています。
 各種消化器がんの専門医が毎日外来にでていますので、いつでも気軽にご相談ください。(2022年5月19日)

血液内科

血液内科では白血病・悪性リンパ腫・多発性骨髄腫などの造血器腫瘍(血液がん)を中心に診療を行います。近年、これらの疾患の病態解明が進むにつれて従来の抗癌剤による化学療法のみならず各種の分子標的薬も駆使する、より精密な治療が実用化されてきました。その結果、かつては非常に予後の不良であった疾患にも高率に治癒が得られたり、日常生活に何の支障もない状態に抑えたりできるようになっています。副作用を抑える治療も次々と標準化されて広く行われるようになり、当然のように起きていた辛い嘔吐や感染・出血といった重大な合併症は滅多に起こらず、血液内科病棟全体が明るくなったというのが数年来の印象です。また骨髄や末梢血、臍帯血を用いた各種の造血細胞移植も適応が大幅に広がり、少し前であれば手の施しようのなかった難治症例の救命を実現しています。京都府下では両大学病院に次ぐ移植実施累積件数(500件以上)であり、今後も力を入れていくべき分野であると認識しています。
増加する一方の血液疾患に対して、迅速・的確な診断と治療方針の決定ができる診療体制づくりに日々努めたいものです。

呼吸器内科

がん治療の基本方針

年間入院延べ300例以上の肺癌診療を行っています。また安定した患者さまでは化学療法を中心とした外来治療を基本としており生活の質を重視しています。
ガイドラインに基づいた医療を提供しながら、画一的な治療ではなく個々の患者さまに適した最良と考える治療法を呼吸器外科・放射線治療科と共に検討しています。また併存疾患に対しては、関連各科と綿密な情報共有を図り安心して治療を受けていただけるよう、多角的な視点から診療レベルの向上を図っています。

がん診断のための検査

超音波内視鏡検査を含む気管支内視鏡検査、CTガイド生検を含めて年間300例近く安全に行っています。超音波内視鏡による縦隔病変の診断も可能です。近年がん診療では必須となったがんゲノム医療にも積極的に取り組んでいます。

消化器外科、肝胆膵外科

当科は、食道癌、胃癌、大腸癌、肝細胞癌、転移性肝癌、胆嚢癌、膵癌を扱っております。それぞれの癌腫について、病状・病態と手術・放射線治療・化学療法・緩和治療など各種治療方法について十分な説明を行い、十分なインフォームドコンセントを得た上で、治療法や手術の術式を選択していっております。検査はできるだけ外来で行い、入院期間を短くするようにしております。また、腹腔鏡やダビンチ(ロボット支援手術)を用いた低侵襲手術から標準手術、拡大手術まで、最新のエビデンスに基づき患者さまの状態に応じた最適な手術を行っております。手術前後の経過は、できるだけクリニカルパスを用いて計画的に管理するようにしております。なお個々の症例については、医局員による毎日のカンファレンスで検討を行っております。

乳腺外科

日本赤十字社の基本理念に基づき人道と奉仕の精神で、専門医が中心に女性医師とともに患者さまを担当しています。診断・手術・化学療法そして緩和医療を含めたトータルケアを目指し、医師・看護師・薬剤師等が協力し合い最善の乳癌診療に取り組んでいます。

入院 患者疾患別患者数(平成29年4月~30年3月)乳腺外科

  病名 入院延べ患者数
1 浸潤性乳癌(再発も含む) 275
2 非浸潤性乳癌 9
3 乳房良性腫瘍 3
3 ニューモシスチス肺炎 3
5 発熱性好中球減少症 2
6 薬剤性間質性肺炎 1
6 細菌性肺炎 1
6 低ナトリウム血症 1
6 悪性リンパ腫疑い 1
6 誤嚥性肺炎 1
6 COVID-19 1
6 リンパ節結核 1
6 乳房脂肪腫 1
6 脱水症 1
  合計 301
手術件数  152
全身麻酔手術 127
局所麻酔 24
麻酔なし 1
乳癌初回手術 115件(121乳房)
乳房温存手術 52件(53乳房)
乳房切除術 64件(68乳房)
乳房再建手術 9件(11乳房)
一次再建(同時再建) 8件(9乳房)
二次再建 1件(2乳房)

治療方針:腫瘍のコントロールを基本にした治療法を勧めています。手術は、乳房温存もしくは胸筋温存乳房切除および形成外科医による乳房再建術が中心となっています。乳房温存療法は、乳癌学会ガイドラインの適応に沿って行うが、術前にMRIなどで腫瘍の拡がりを厳密に評価し、手術中に乳腺の断端の病理検査を詳細に行い腫瘍の取り残しを防いでいます。希望があれば腫瘍が大きくても術前化学療法を併用するなどして乳房温存療法を検討しています。薬物療法については St.Gallen consensus会議や NCCNのガイドラインを参考にエビデンスに基づいた標準的治療を心掛けています。特に外来化学療法室においては、チーム医療により支持療法を強化するなど治療を断念することないよう工夫しながら施行するため、ほとんどの患者さまが予定通り治療を遂行することができています。
10年生存率はⅠ期が92%、ⅡA期が88%、ⅡB期が80%、ⅢA期が74%です。

医療設備:MRI、CT、各種シンチグラフィ、リニアック、マンモグラフィ、超音波、エラストグラフィ、センチネルリンパ節生検(蛍光色素・RI)、吸引式針生検装置その他。

呼吸器外科

呼吸器外科では原発性肺癌、転移性肺癌、縦隔腫瘍、胸膜腫瘍、胸壁腫瘍などに対する外科的治療を行いますが、ここでは原発性肺癌に対する治療方針について説明します。
原則として肺癌診療ガイドラインにしたがって治療方針を決定し、病期Ⅰ、Ⅱ期は手術を行います。ⅢA期については完全切除可能な症例は切除を行いますが、その際、症例に応じて術前化学放射線療法も行っています。胸壁、大血管浸潤なども必要に応じて形成外科や心臓血管外科の協力のもとに積極的に合併切除を行い、治癒をめざします。また、完全切除困難な症例に対しても、薬物療法や放射線治療後に残存病変の切除適応があるかどうか、呼吸器内科と検討します。
当科では胸腔鏡手術が手術全体の90%を占め、肺癌に対してもⅠ期の症例のほとんどに胸腔鏡手術を行っています。当科の胸腔鏡手術はモニター視のみで行う完全鏡視下手術です。Ⅱ、Ⅲ期の症例に対しては根治性に問題がなければ胸腔鏡手術、根治性に問題があれば開胸手術を行います。
ロボット支援手術も増えてきました。
標準術式は肺葉切除術ですが、きわめて早期と考えられる肺癌も増加しており根治をめざした肺区域切除術も積極的に行っています。当院は肺機能が悪い方や高齢の方あるいは持病がたくさんある患者さまも多いですが、胸腔鏡手術(ロボット支援手術を含む)、肺区域切除、部分切除などを組み合わせて、できるだけ根治性があって体に影響の少ない手術を検討しています。
なお、治療方針は症例に応じて呼吸器外科、呼吸器内科、放射線科、病理診断医、臨床腫瘍部などが参加するカンファレンスで決定しています。

形成外科

がん診療連携拠点病院である当院において形成外科に課せられた役割は、各種がんを切除したのちに生じる組織欠損、またそれがもたらす醜形の改善です。
とりわけ顔面や乳房、その他あらゆる体表組織においては、切除後の形態損傷が患者さまの社会生活に大きな障壁となり得るため、これらに対し適切かつ速やかに再建手術を行い、患者さまの精神的苦痛を最小限にできるよう心掛けています。

皮膚がん

切除後の欠損が、深部・広範囲に達するもの、もしくは切除が患者さまの外見に著しい影響を及ぼすと考えられるものに対し、切除・再建術を行っています。

乳がん

乳腺外科による切除ののち一次的もしくは二次的に再建術を行います。再建材料にはシリコン製インプラントを用いるか(日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会乳房再建用エキスパンダー/インプラント責任医師登録済み)、患者さま本人の自家組織を用いるか、患者さまと相談の上で最も良い方法を選んでいます。乳輪・乳頭再建も行っています。

頭頸部がん

頭頚部外科による切除ののち一次的に再建術を行います。特に理由のない限り遊離皮弁を第一選択にしています。術後の顔貌の変化や機能障害に関しても可能な限り長期に経過を観察して、患者さまの要望に沿えるようにしています。

その他

消化器外科領域のがん切除後の腹壁欠損や、婦人科領域のがん切除後の外陰部組織欠損に対しても、種々の組織移植や皮弁術による再建を行っています。

産婦人科

京都におけるがんセンター的役割も担っており、婦人科悪性腫瘍の診断と治療を積極的に行っています。 治療に際しては婦人科がん治療ガイドラインにのっとり、患者さまのQOLを考慮した治療を心がけています。

  1. 初期子宮頸癌~上皮内癌・前癌病変である異型上皮の診断・治療は正確なコルポ診断と細胞診・病理診断の基に適切な治療方針を立て、炭酸ガスレーザーを使用した蒸散治療から子宮を温存する頸部円錐切除まで施行しています。 進行子宮頸癌は症例により手術療法あるいは、臨床研究として術前動注療法又は化学療法を施行後、腫瘍を縮小させ、より安全で確実な根治的手術療法を選択しています。初期進行子宮頸癌に対しては、腹腔鏡下広汎子宮全摘術を2年前から先進医療として導入しており、良好な成績を収めています。平成30年4月からは保険診療として扱われていますので、さらに安心して治療を受けていただけるようになりました。進行・再発癌は放射線治療専門医と協同の上、放射線治療を行っています。
  2. 子宮体がんでは症例に応じてリンパ節郭清を拡大させ、ガイドラインにのっとり術後の化学療法を行っています。子宮体がんに対する腹腔鏡手術も開始いたしました。
  3. 卵巣がんで進行している症例では、術前化学療法にて腫瘍の縮小を図り、根治的手術療法を行っています。術後の化学療法についても組織型に応じて施行しています。

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

当科は頭頸部外科学会による頭頸部がん専門医制度指定研修施設であり、専門医1名が中心となって、診療を行っております。
頭頸部悪性腫瘍手術は年間およそ130例施行しており、鼻・副鼻腔癌・咽頭喉頭癌から甲状腺腫瘍や唾液腺腫瘍など頭頸部領域全般に治療を対象にします。
手術治療・放射線治療・化学療法を中心に集学的治療を行っておりますが、進行癌に関しては外科、形成外科などと合同に拡大手術が可能となっています。
一方で、NBIなどの医療機器の進歩にて咽頭表在癌の早期発見が可能となり、消化器内科と合同で内視鏡的切除術を行い、臓器・機能の温存を目指した治療も積極的に施行しております。
嚥下訓練や緩和治療なども各専門チームと綿密な連携で対応しております。

皮膚科

皮膚科では皮膚悪性腫瘍の診療に力を入れております。日本皮膚悪性腫瘍学会の「皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン」に基づき、患者さまの希望も考慮しながら、腫瘍切除やリンパ節郭清、植皮などの皮膚外科手術、抗がん剤治療、放射線治療、内服PUVA療法などをおこなっています。
また2011年から、悪性黒色腫に対する「RI法とICG蛍光色素法を併用したセンチネルリンパ節生検」を行っています。悪性黒色腫はご存じのように、進行するとリンパ節転移をおこす可能性が高い疾患です。センチネルリンパ節とは最初に転移を起こすリンパ節であり、そのセンチネルリンパ節を生検し、腫瘍の転移が認められない場合は、その先のリンパ節に転移している可能性はきわめて低いと考えられます。その場合はリンパ節廓清を省略できるので、患者さまの負担を軽減することができます。京都府下において、悪性黒色腫に対するセンチネルリンパ節生検を行っているのは、大学病院と当院のみです。
一方で緩和ケアチームや地域の医療機関、介護施設とも連携して、治療初期から終末期に至るまで苦痛の軽減や精神的サポートを行い、がん治療を受ける患者さまが質の高い生活を送れるように努めています。

泌尿器科

主に尿路と男性性器のがんを扱っています。その代表は前立腺がん、膀胱がん、腎がん・腎盂尿管がんです。尿道がん、陰茎がん、精巣悪性腫瘍、副腎がん、後腹膜腫瘍など比較的希少ながんの治療も行っています。
診療を行うのに当たって、的確な診断が必要になります。同じ腎臓からでも腎がんと腎盂がんでは治療が全く異なります。より迅速な診断を心がけています。前立腺がんは PSA検査で見つかることがほとんどです。かかりつけ医で行われた PSA検査の異常で受診される方がたくさんおられます。また京都市をはじめとした市町村でも前立腺がん検診が行われており、当院は二次検診の協力施設となっています。
治療に当たっては低侵襲な治療を心がけています。手術では早くから腹腔鏡下手術を行っており、腎がん・腎盂尿管がん・前立腺がんについては腹腔鏡下手術が主になっています。特に腎がんに対する腎部分切除術、前立腺がんに対する前立腺全摘除術についてはロボット支援下手術を行っています。早期の回復が図れ、生活の質(QOL)の維持に寄与しています。
限局性前立腺がんの治療では、手術療法と放射線治療がほぼ同等の成績といわれています。残念ながら当院での(前立腺がんに対する)精度の高い放射線治療は停止しています。放射線治療を希望される場合には精度の高い放射線治療(IMRT)や陽子線治療が可能な近隣施設に紹介させていただいています。いずれにしても治療の選択に当たっては患者さまと十分な時間をとって相談の上、適切な治療選択を行うようにしています。
膀胱がんでは、膀胱を温存する経尿道的治療を中心としています。生命予後にかかわるため、必要時には膀胱全摘除術を行っています。膀胱全摘除術前の抗がん剤治療が有効であると言われていますので、術前化学療法も行っています。膀胱全摘除術時には、可能な症例では積極的に小腸を用いた代用膀胱を造設しています。
がん種を問わず進行がんに対しては、新しい抗がん剤や分子標的治療薬、免疫製剤を取り入れた薬物療法を行っています。本邦で保険適応となっている薬物治療のほとんどが実施可能です。化学療法と手術や放射線療法を組み合わせた集学的治療にも積極的に取り組んでいます。がん治療認定医がおり、稀少がんについても対応させていただきます。がんの治癒とQOLの保持を両輪に、患者さまと向き合って治療を考えていく医療を心がけています。
お困りの点やご不明の点があれば、気軽にお声をかけてください。

放射線治療科

がんの3大治療法は手術・化学療法・放射線療法です。放射線治療で治癒を目指すがんもいくつもあります。
放射線治療はからだの形態や機能を維持できることが多く、身体負担が少ない治療のひとつです。このため放射線治療は高齢者や合併症があって手術や抗がん剤治療が困難な方でも治療の機会が得られる適応の広い治療法です。通院可能な方は外来通院での放射線治療を積極的にサポートしていきます。
放射線治療科ではアイソトープ内用療法にも取り組んでおり、放射線を用いた治療の機会を増やしています。

緩和ケア内科

緩和ケアとは、“生命を脅かす疾患による問題に直面している患者とその家族に対して、痛みやその他の身体的問題、心理社会的問題、スピリチュアル(霊的)な問題を早期に発見し、的確なアセスメント(評価)と対処(治療・処置)を行うことによって、苦しみを予防し、和らげることで、QOL(人生の内容の質)を改善するアプローチである。(2002、WHO)”とされています。
以前は緩和ケアというと“終末期”を連想されがちでしたが、現在のがん診療では、“がんと診断されたときから、がんそのものに対する治療と平行して、いろいろながんに伴う”つらさ“を解決しようとするのが緩和ケア”であり、がんといわれたときから緩和ケアは受けられるべきものであると考えられています。
緩和ケア内科および緩和ケアチーム(身体症状担当医師2名、精神症状担当医師1名、心理師1名、放射線治療科医師1名、臨床腫瘍部医師2名、整形外科医師1名、歯科口腔外科医師1名、がん看護専門看護師1名、がん性疼痛看護認定看護師1名、緩和薬物療法認定薬剤師3名、管理栄養士1名、理学療法士1名、作業療法士1名、医療ソーシャルワーカー1名などの多職種から構成)は、本院に通院中および入院中のがん患者さんに緩和ケアを提供しています。緩和ケアを希望される場合は、外来では外来主治医や外来看護師に、入院中では入院の主治医や病棟看護師にご相談ください。

病理診断科

病理診断科は中央診療部門として、細胞診・組織診・剖検の形態学的診断を行っています。当科では基本的に「臨床に直結する、役に立つ病理診断」を目標としています。
肉眼的診断においては、放射線画像や内視鏡像などの臨床画像との対応を強く意識して標本の切り出しを行っており、さらに組織像との架け橋として実体顕微鏡を駆使してHRCTや拡大内視鏡像と顕微鏡像との対応をとっています。
組織学的診断においては、現代の病理学の”higher standard”を目指しており、現在使い得るあらゆる手法を駆使して、精度の高いup-to-dataな診断を行っています。
ステージングについては取扱い規約・UICCに準拠していますが、その適用に際しては細心の注意を払っており、精度に関しては外部からも高く評価されています。さらに近年の化学療法の発達に伴って、病理組織学的なレセプター、キナーゼなどの検討が要求されていますが、当科では常に保険適用に先行してそれらの検討を行い、ルーチンの診断に組み込んでいます。また診断に関しては全例病理医間でクロスチェックして精度管理を行っています。

薬剤部

がん診療において薬物治療は、大きなウエイトを占めています。私達はそのお薬全般について関与していくことが薬剤師の責務と考えています。
薬物治療を受けられる患者さんの不安や疑問を解決するためのサポートや、治療中に気をつけていただきたいことなどをお知らせすることにより、患者さんに安心して治療を受けていただけるように努めています。
また、がん治療で使われる薬剤は、他の薬剤に比べて取り扱いに注意すべきことが多く、入院・外来を問わず、専用システムを使った処方監査・スケジュール管理、安全キャビネット内での無菌調製、検査データの確認などを行うことにより、安全な治療をアシストできるよう業務をすすめております。治療に用いるお薬についてはもちろんですが、他院からもらわれているお薬、健康食品などについても情報収集・情報提供させていただき、安全な治療ができるように努めています。つまり「がん」についてだけではなく、患者さんのお薬をトータルで管理できることを目指しているのです。
その一環として、令和2年10月1日から、外来がん化学療法をより安心・安全に実施していくため、保険調剤薬局との連携を強化・充実させる取り組みを始めました。化学療法室に薬剤師が常駐し、患者さんのお薬手帳に化学療法で使用する抗がん剤などの内容を記載したシールを貼付し、点滴および内服内容の確認、有害事象の評価、支持療法の処方提案などをおこなったり、保険調剤薬局の先生からのお問い合わせに対応したりしています。まずは、免疫チェックポイント阻害薬での治療を受けておられる患者さまを中心に取り組みを開始しているところです。
がん薬物療法や緩和薬物療法など各種の認定薬剤師などの養成、院内医療チームの一員としての回診への同行、カンファレンスへの参加、地域の保健調剤薬局との連携などを通じて、患者さんのより良い治療のお役に立てるよう取り組んでいます。

看護部

がん看護専門看護師とがんに関連した認定看護師がリソースナースとしてがん看護チームを構成し、各部署のがん看護係と連携しながら、がん看護の質の向上に向けての教育に取り組んでいます。
また、これらのリソースナースは医師・コメディカルと連携し、患者さま・ご家族さまのニーズに寄り添った専門性の高い医療の提供に努めており、以下にその取り組みを紹介します。

  1. がん看護外来:医師が、がん告知などを行う場面には、がん看護専門看護師や認定看護師が同席して、精神的な支えとなり治療選択の意思決定を支援しています。
  2. 緩和ケアサポート体制:入院中の患者さまに、医師・看護師・薬剤師・栄養士等の緩和ケアチームが協働して、早期より適切な緩和ケアを提供しています。
  3. 同行訪問:緩和ケアを必要とされる方や褥瘡のケアを必要とされる方の訪問看護を行われている訪問看護ステーションとともに、当院の認定看護師が同行訪問をさせていただいています。
  4. ELNEC-Jの研修を毎年行っており、地域の看護師の方々にもご参加いただいております。

これからも多職種チームで一人一人の患者さま自身が病気の知識を深めて病気と向き合い、自ら治療に参加できるように支援して参ります。治療終了後は、地域で心身ともに健やかに生活が送れるように、地域診療・介護を支える方々と連携して参ります。