出生前診断外来
1.外来の目的
出生前診断とは、妊娠中に行われる胎児異常の有無を調べる検査を意味しています。通常妊婦健診で行われている超音波検査や胎児心拍モニターなども広い意味での出生前診断になります。当外来は、出生前診断の中でも胎児の染色体異常や遺伝疾患などの遺伝学的異常を様々な理由で心配されている患者さまを対象とした外来です。
患者さまのお子さんがどの程度遺伝学的異常の可能性があるのかのリスクの説明、当院で行っている遺伝学的検査の説明などを行い、今後検査を受けるかどうかの意思決定を助けるための外来となります。
2.先天性疾患と染色体疾患
出生児の3〜5%が先天性疾患を持って生まれます。
先天性疾患の中で染色体疾患によるものは25%、その他は多因子遺伝、単一遺伝子疾患、環境・催奇形因子などの影響と考えられています【グラフ1】。
染色体とは、遺伝子といわれる人間の設計図の集合体であり、人の細胞の中に46本ずつ入っています。22種類が各2本、性別を決定する性染色体が2本の合計46本となります。
染色体は数や形に変化が見られることがあります。そういった変化で、遺伝子の過不足がおこると胎児の発生や成長に影響し染色体疾患になります。染色体疾患の中で頻度が高いのが、13・18・21番の染色体が3本になる疾患(トリソミー)です【グラフ2、図】。当院では、トリソミーのリスクをより正確に判断する検査としてクワトロテスト、NIPTを提供しています。

【グラフ1】先天性疾患の原因内訳

【グラフ2】染色体疾患の原因内訳

【図】18トリソミーの染色体(女児)
3.当院で行っている出生前診断
*非確定検査
- クワトロテスト
母体血を採血し、血液中のAFP、hCG、E3、インヒビンAを測定し21トリソミー、18トリソミー、開放性神経管奇形の確率がわかる検査です。妊娠15週以降での検査が可能です。 - NIPT
母体血中胎児cell free DNAを測定し、13、18、21トリソミーのリスクを評価する検査です。当院では原則妊娠9週0日~15週6日で検査を行っています。 詳細は7.NIPTを希望する患者さまへをご覧下さい。
※NIPTの臨床研究は終了いたしました。2019年10月よりNIPTの適応を変更しております。
*確定検査
- 羊水検査
妊娠子宮に針をさし、羊水を吸引し、羊水中の胎児由来細胞中の染色体を解析することで、染色体の異常を調べる検査です。当院での解析は、FISH法とG−band法で行っており、染色体の数の異常や構造異常などを診断することが出来ます。羊水検査で診断できるのは染色体や遺伝子異常の特定の疾患の診断のみ可能であり、すべての異常がわかる検査ではありません。
検査は妊娠16週以降で行います。
◎胎児超音波
当院出生前診断外来では、致死的胎児疾患の除外や染色体疾患リスク評価目的に、全例に胎児超音波を行います。
4.外来の日時(初診)
毎週 | 水曜日 15:00〜15:30 |
木曜日 14:30・15:00・15:30 |
30分/1枠で遺伝カウンセリングを行います。
5.予約の方法
当院で妊婦健診及び分娩予定の患者さま➡担当医より外来予約
他院で妊婦健診及び分娩予定の患者さま➡
・病院・診療所さまからのご予約は【診察申込票】をご利用いただきFAX予約をお願いいたします。
・患者さまご本人からのご予約は【NIPT事前予約申込票】(PDFリンク)をご記入いただいた後、地域医療連携室(TEL075-533-1257)へお電話にてご予約ください。
- *ご予約の際は、「7.NIPTを希望する患者さまへ」をよくお読みください。
- *地域連携室を介して予約をお願いいたします。
- *予約枠に限りがあるため、すべての予約を受け付けられない可能性があります。
6.費用について
※受診料、検査費用はすべて自費診療となります。
●遺伝カウンセリング費用
- 初診5,000円/30分 再診3,000円(税込)
●検査費用
- クワトロテスト :17,000円(税別)
- 羊水検査 :約160,000円(税別)
- NIPT :
180,000円(税別)⇒ 130,000円(税別)2022.9.1検査実施分より
(NIPT陽性の場合の羊水検査費用も含まれます。)
7.NIPTを希望する患者さまへ
NIPTとはnon-invasive prenatal testingの略で、無侵襲的な母体血を用いた胎児染色体検査を意味します。
羊水検査のような侵襲なく、母体採血のみで胎児染色体疾患の有無を推定できます。
NIPTについて
- NIPTの原理
お母さんの血液の中に胎盤から漏れ出てくる赤ちゃん由来のDNAが約10%混ざっています。その胎児由来のDNAを解析してどの染色体に由来しているかを決定します。トリソミーといわれる染色体の数が増える疾患では、増えている染色体由来のDNAの量がわずかに増加しています。母体血を20ml採取しその中の胎児DNAを解析し、その増加を計算することで21、13、18番染色体の数的異常を予想します。
- NIPTの精度
妊婦の年齢(歳) | 検査時期にダウン症の児を 妊娠している確率(%) |
陽性的中率(%) | 陰性的中率(%) |
---|---|---|---|
30 | 1/470 | 67.8 | 99.99 |
35 | 1/185 | 84.3 | 99.99 |
40 | 1/50 | 95.3 | 99.98 |
44 | 1/15 | 98.6 | 99.94 |
他の血清マーカーに比較し、陽性的中率は高い検査ではありますが、検査陽性でも実際にトリソミーでない可能性もあり、確定診断にはならない検査です。この検査で陽性であった場合は羊水検査で真に疾患があるのか確定診断が必須となります。
- NIPT検査対象
対象疾患:21トリソミー(ダウン症)、13トリソミー、18トリソミー
*21トリソミー、13トリソミー、18トリソミーは染色体疾患の7割を占めています。
本検査はこの3疾患を検出する検査であり、その他の染色体疾患は検出できません。染色体疾患は先天異常の25%にすぎません。
- NIPT対象患者
胎児の染色体疾患(21トリソミー、18トリソミー、13トリソミー)についての検査希望があり、以下のいずれかの条件を満たす妊娠女性
① 染色体疾患(21トリソミー、18トリソミー、13トリソミーのいずれか) に罹患した児を妊娠、分娩した既往を有する場合
② 胎児が染色体疾患(21トリソミー、18トリソミー、13トリソミーのいずれか)に罹患している可能性の上昇を指摘された場合
③ ①②には該当しないが不安の強い方
単胎、または、双胎の出産予定である方
- NIPT検査対象週数
妊娠9週0日~15週6日で採血を行います。
検査予約は妊娠8週0日より受け付けます。
- NIPTの検査結果
- 採血後約2週間程度で結果が出ます。
- 陽性・陰性・判定保留といった検査結果となります。
- 陽性の場合、羊水検査で真に陽性なのか確定検査が必須となります。
- 陰性の場合、トリソミーのリスクは非常に低くなります。
- 判定保留とは、陽性・陰性の判断が出来ない場合です。約0.3%と非常に可能性は低くなりますが、稀にそのような結果となる場合があります。一度の採血で結果が出ず、再検査が必要となる場合もあります。