診療科・部門のご紹介

診療科・医師のご紹介

呼吸器外科

低侵襲を目指して区域切除や胸腔鏡、ロボット支援手術を積極的に取り入れています。

スタッフ

上島 康生
役職 部長
氏名 上島 康生
卒業年 昭和61年
専門領域 呼吸器外科
認定医・専門等資格名 日本外科学会専門医
日本胸部外科学会指導医
呼吸器外科専門医
日本がん治療認定医機構がん治療認定医
手術支援ロボットダビンチ術者認定資格
日本呼吸器外科学会ロボット支援手術プロクター
胸腔鏡安全技術認定取得
日本呼吸器外科学会評議員
京都府立医科大学臨床教授
コメント 呼吸器外科の手術を担当しています。対象疾患は肺癌、転移性肺腫瘍、気胸、膿胸、炎症性肺疾患、縦隔腫瘍、胸壁腫瘍、外傷等です。手術は縮小手術から拡大手術までおこなっており、体に影響の少ない胸腔鏡手術やロボット支援手術も積極的に取り入れています。また、呼吸器内科と密に連携しており、外科的治療と内科的治療を柔軟にうまく組み合わせることが可能なことも良い点だと思います。外来診察日は木曜日です。呼吸器疾患で手術が必要な方、ぜひ御相談下さい。
本田 和暉
役職 専攻医
氏名 本田 和暉
卒業年 平成31年

診察担当表

一診 上島
二診 西村

診療実績

主な診療実績(2017-2021年)

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疾患名 2017年 2018年 2019年 2020年 2021年
原発性肺癌 73 73 95 107 88
転移性肺腫瘍 12 9 8 13 19
気胸 21 17 15 8 23
縦隔腫瘍 4 13 10 13 8
その他 32 40 39 33 38
合計 142 152 167 174 176
ロボット支援手術 72例

手術方法

胸腔鏡手術

胸腔鏡という内視鏡を用いることにより小さな創で手術をおこなう方法です。
当科では1994年に導入し、現在では呼吸器外科手術の約90%を胸腔鏡手術で行っています。原発性肺癌、転移性肺腫瘍、気胸、肺嚢胞、膿胸、縦隔腫瘍等のいろいろな病気が対象になります。
胸腔鏡手術の利点として術後の痛みが軽い、創が目立たない等があげられます。

ロボット支援手術(ダヴィンチ)

2018年度より、ロボット支援肺悪性腫瘍手術が保険で認められ、その後ロボット支援肺癌手術が行われることが増えています。当院でも、ダヴィンチ(ロボットの名前)を導入し、2019年より肺癌手術を行っています。
従来の胸腔鏡手術に比べて、ロボット支援手術が優れているかどうかはまだわかっていませんが、合併症の発生、出血量が少なく、痛みが軽いという報告があります。
長所として、3Dモニターによる、より正確な体の構造の把握と、鉗子の可動域が大きいことによる手術操作のやりやすさの増加のために、より正確な手術になる可能性があると期待されます。また、コンピューター制御により手のふるえなどの影響も抑えることが可能とされます。ただし、短所もあり、現在のロボット支援手術では、触った感じを知ることは不可能です。見えている部位は問題ないことがほとんどですが、見えていない場所で鉗子が当たったりすると思わぬ損傷を起こす危険があり、十分に注意しています。
当科では、痛みの面等で患者さんにメリットがあると考え、ロボット支援手術を積極的に行っています。

開胸手術

大きな創で手術を行う方法です。
胸腔鏡手術が困難な場合、開胸手術を行います。進行肺癌に対しては安全性や根治性が落ちることがないように開胸手術を選択する方が適切な場合があります。

原発性肺癌の治療

肺癌の最も治癒率の高い治療法は切除であり、完全切除可能であれば切除を基本方針としています。進行肺癌については他の治療法と組み合わせて治癒率の向上に努めています。呼吸器外科、呼吸器内科、放射線科、病理診断科でカンファレンスを行って治療方針を検討します。術前術後の治療は化学放射線治療の専門家である呼吸器内科医、放射線治療医が担当します。
Ⅰ期、Ⅱ期の患者さんには原則的に手術を行い、切除した癌を詳しく病理検査した結果により、必要であれば術後抗がん剤治療を行います。Ⅲ期の患者さんは、抗がん剤や放射線治療などの他の治療との組み合わせを十分に検討した上で手術を行うかどうか決定します。

病気の進行度に応じた手術方針

Ⅰ期の症例:
ほとんどの場合、胸腔鏡手術やロボット支援手術で行います。肺癌手術は肺を多く切除する肺葉切除が原則ですが、最近は、早期の肺癌の場合は切除量を減らしても大丈夫という研究結果がでています。肺をどれだけ切除するかどうかが体への負担に大きく影響しますので、早期の肺癌で肺をたくさん切除しなくてもよい場合や肺機能が不十分なために肺を切除する量を少なくしないといけない場合には肺区域切除や肺部分切除という肺をたくさん残せる術式も積極的に行っています。
Ⅱ期の症例:
胸腔鏡手術やロボット支援手術で、開胸手術と同様の手術を行える場合が多く、胸腔鏡手術やロボット支援手術を行うことが多いです。ただし、難しい場合は安全性と癌の根治性を保つために開胸手術を行います。
Ⅲ期の症例:
Ⅱ期の場合と同じです。ただし、特に癌が胸壁や大血管などに及んでいる場合などは、それらも一緒に切除する必要があるため開胸手術が必要です。
Ⅳ期の症例:
手術以外の方法で治療する場合が多いです。ただし、転移が1か所だけで転移の数も少ないときは手術が有効な場合があり、治癒のチャンスを逃さないように手術も検討します。

手術成績

当院での手術後の5年生存率は、病理病期Ⅰ期85%、Ⅱ期58%です (2009年から2013年の手術症例での検討)。

入院期間

術前検査はできるだけ外来でおこない、入院はできるだけ手術前日としています。クリティカルパスを用いており、8日あるいは10日間の入院期間を設定しています。2015年から2018年6月までの検討では、原発性肺癌術後の入院期間は平均9.2日でした。

安全性

肺癌手術後の入院中の死亡はこの3年間認めませんでした。どうしても合併症(治療を要するような肺からの空気漏れ、不整脈、膿胸、脳梗塞など)が生じることがありますが、できるだけ減らすように努力しています。高齢の方や、肺機能が悪い方には可能であれば胸腔鏡手術、区域切除等の体に対する影響の少ない手術方法を選んでいます。循環器系や神経系の病気をお持ちの方も多いですが、当院にはそれぞれの専門科があり対処しやすいのも良い点と考えています。

気胸の治療

気胸の治療には安静、胸腔ドレナージ、手術、胸膜癒着術などがあります。

安静

軽度の気胸の場合、入院または自宅で安静にしていただくことで治癒することも多いです。

胸腔ドレナージ

胸腔に管(胸腔ドレーン)を入れて空気を外に出すことにより、しぼんだ肺をひろげます。基本的に入院して治療します。肺からの空気もれが自然に止まるのを待ちます。気胸になった原因は残るので、再発がよくあります。

手術

胸腔ドレナージで治癒しない場合や、一度治癒しても再発した場合に行います。最初から手術を選択する場合もあります。

胸膜癒着術

胸腔ドレーンから薬剤を胸腔内に注入することにより、炎症をおこして肺を癒着させて空気もれを止める治療です。手術が不適当な場合に行います。

当院の気胸手術

胸腔鏡手術を基本にしています。気胸の原因となるブラを切除したり、糸でしばります。術後再発は一般的に約10%とされ、当院でも約5%の方に再発を認めました(2008-2013年に手術した症例での検討)。