診療科・部門のご紹介

診療科・医師のご紹介

脳神経・脳卒中科

スタッフ

今井 啓輔
役職 部長
氏名 今井 啓輔
卒業年 平成6年
専門領域 神経疾患全般、神経救急疾患、脳血管疾患、脳血管内治療
認定医・専門等資格名 日本内科学会認定内科医
日本内科学会総合内科専門医
日本神経学会神経内科専門医・指導医・代議員
日本脳卒中学会脳卒中専門医・評議員
日本脳神経血管内治療学会専門医・指導医(番号126)
日本救急医学会救急科専門医
日本脳神経超音波学会認定脳神経超音波検査士
京都府立医科大学臨床教授・客員講師
山田 丈弘
役職 副部長
氏名 山田 丈弘
卒業年 平成16年
専門領域 臨床神経学全般、 神経救急医療、 神経感染症治療、 脳梗塞急性期管理、 脳血管内治療
認定医・専門等資格名 日本内科学会認定内科医
日本内科学会総合内科専門医・指導医
日本神経学会神経内科専門医・指導医
日本脳卒中学会脳卒中専門医・指導医
日本脳神経血管内治療学会専門医
ISLS認定ファシリテーター・コーディネーター
臨床研修指導医
役職 医長
氏名 沼 宗一郎
卒業年 平成23年
専門領域 神経疾患全般、神経救急疾患、脳血管疾患、脳血管内治療
認定医・専門等資格名 日本内科学会認定内科医
日本神経学会神経内科専門医
3学会承認脳血栓回収実施医
役職 医師
氏名 崔 聡
卒業年 平成28年
専門領域 神経疾患全般、神経救急疾患、脳血管疾患、てんかん、脳炎、脳症
認定医・専門等資格名 日本内科学会内科専門医
役職 医師
氏名 長 正訓
卒業年 平成28年
専門領域 神経疾患全般、神経救急疾患、脳血管疾患、脳血管内治療
認定医・専門等資格名 日本内科学会内科専門医
役職 非常勤
氏名 長谷川 真一
専門領域 頭痛、神経変性疾患
認定医・専門等資格名 日本内科学会認定内科医
日本内科学会総合内科専門医
日本神経学会神経内科専門医・指導医
日本頭痛学会認定頭痛専門医・指導医
役職 非常勤
氏名 田中 直樹
卒業年 平成4年
専門領域 神経変性疾患
認定医・専門等資格名 日本神経学会神経内科専門医
日本内科学会認定医
役職 非常勤
氏名 濱中 正嗣
卒業年 平成11年
専門領域 神経疾患全般、神経救急疾患、脳血管疾患、脳血管内治療
認定医・専門等資格名 日本内科学会認定内科医
日本内科学会総合内科専門医
日本神経学会神経内科専門医・指導医
日本脳卒中学会脳卒中専門医
日本脳神経血管内治療学会専門医
日本脳神経超音波学会認定脳神経超音波検査士
役職 非常勤
氏名 北大路 隆正
卒業年 平成25年
専門領域 神経疾患全般
認定医・専門等資格名 日本内科学会認定内科医
日本神経学会神経内科専門医
役職 非常勤
氏名 猪奥 徹也
卒業年 平成26年
専門領域 神経疾患全般、 神経救急疾患、 脳血管疾患、脳血管内治療
認定医・専門等資格名 日本内科学会認定内科医
日本神経学会神経内科専門医
日本脳卒中学会専門医
日本脳神経血管内治療学会専門医

診察担当表

完全予約制

 

一診⑪ 山田

(病診)

山田

(再診)

濱中

(病診)

長谷川

(頭痛病診)

今井
(病診)
二診⑩ 今井
(再診)
AM:今井

(脳卒中病診)

PM:崔・長

(隔週・再診)


(再診)

(病診)
(再診)
三診⑫ 田中
(再診)

(病診)

担当医

(再診

 沼(病診) 猪奥

(再診)11:00まで

診療方針

診療疾患

脳神経・脳卒中科は、「脳神経内科疾患」と「急性期脳梗塞を中心とした脳卒中疾患」の診療を専門にしています。当科の最大の特徴は、三次救命救急センターの一員として脳神経救急疾患(脳梗塞、てんかん・脳症、神経感染症など)の診療を院内外の多職種チーム医療のもとで実践していることです。当科スタッフは皆、臨床脳神経学をベースにした上で、内科学、救急医学、脳卒中学、脳神経血管内治療学、脳神経超音波学、栄養学、リハビリテーション医学、血液凝固学など、多分野の知識と技能を常に取り入れることを心がけて日常診療に従事しております。特に3つのコード(Code Blue: 院内急変への対応、Code Stroke: 急性期脳卒中患者さまへの迅速な対応、Code Neurology: 神経疾患の診断/治療/ケアの方針についてのスタッフ間での綿密な検討)にはできるだけスタッフ全員で取り組むよう、心がけています。
脳神経救急疾患に罹患された患者さまは京都府全域から常時受け入れており、特に急性脳梗塞の再開通治療(tPA静注療法とカテーテル手術)に積極的に取り組んでいます。
その一方で、脳神経内科医療の地域中核病院として、近隣にお住まいの患者さまや他科入院中の患者さまの一般脳神経内科疾患の診療にも従事しています。
「脳神経救急診療と一般脳神経内科診療の両立」こそが、患者さま・実地医家の先生方から求められている当科の役割と考えています。

ソフトとハードの両面の強化によるチーム医療

当院における脳神経内科領域でのチーム医療に関して、ソフト面としては、当科スタッフは木村聡志部長を中心とした脳神経外科医師、竹上徹郎部長・安 炳文部長を中心とした救急科医師、池田 巧部長をはじめとしたリハビリテーション科スタッフ、その他の科の医師、研修医と密な連携体制を構築しています。具体的に述べますと、重篤な脳神経救急疾患では、各ICU常勤の麻酔科医や救急医による呼吸循環管理上のサポート体制があります。脳梗塞では、脳神経外科医による直達手術が受けられ、循環器内科医による循環管理と塞栓源精査に関する全面的な協力が得られます。神経免疫疾患では、腎センター医師による血液浄化療法(各ICUベッドサイドで可能)、脳炎・髄膜炎といった神経感染症では、感染制御部からの協力が得られます。膠原病関連脳神経疾患では、リウマチ・膠原病センター医師からの助言が受けられます。また、当科医師と、看護師や放射線技師、臨床検査技師、栄養士、メディカルソーシャルワーカー、その他のコメディカルの強固な院内連携体制も確立されています。このように、各科の垣根が低く、医療への情熱で溢れるメディカルスタッフの全面的な協力が得られる当院の環境は、全身疾患である脳神経疾患を診療する上で理想的なものであるといえます。
一方、ハード面としては、2012年の新棟(C棟)完成後、救急室経由の重症例が入室する救命集中治療室(ICU)と、術後の重症例などが入室する院内ICUが併設され、救命救急センターをあわせて脳神経救急疾患の搬送や転院の受け入れ体制が強化されています。2019年4月からは最新の血管造影機器(Philps社 Azurion7 B20/15)を導入し、手術成績のさらなる向上を目指しています。
脳神経救急を含めた脳神経内科診療には、チーム医療の実践が不可欠であり、当科でも現状に甘んじることなく、今後も更なる院内連携の強化に取り組んでいくつもりです。

診療疾患と診療実績

診療疾患

当科で主に診療する疾患とその症状経過です。

  疾患名 症状
1 急性期脳血管障害(脳梗塞や一過性脳虚血発作) 突然、意識障害、半身の脱力やしびれ、しゃべりにくさ、見えにくさ、歩きにくさ、頭痛などの症状が出現します。
2 神経感染症(髄膜炎・脳炎)や急性脳症 急速に、頭痛や発熱とともに意識障害が出現することが多いです。性格変化が前面に出ることもあります。発熱がないこともあります。
3 痙攣(てんかんを含める) 突然、不随意な運動とともに意識障害が出現します。ただし,意識がないこともあります。
4 ギラン・バレー症候群、重症筋無力症クリーゼ、周期性四肢麻痺 急速に(数時間〜7日)進行する、四肢の脱力、息苦しさ、歩きにくさがみられます。
5 認知症(アルツハイマー型認知症、血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭葉型認知症) 緩徐に(数か月から数年)進行する、記銘力障害や性格障害などにより日常生活に支障をきたします。
6 上記以外の変性疾患(パーキンソン病、脊髄小脳変性症、筋萎縮性側索硬化症) 緩徐に(数か月から数年)に進行する、動作緩慢、失調、筋力低下などにより、日常生活や歩行が困難となってきます。病初期は手のふるえなどの不随意運動のみの場合もあります。
7 脱髄性疾患(多発性硬化症、急性散在性脳脊髄炎、ギラン・バレー症候群、慢性炎症性脱髄性根神経炎) 急性から慢性に進行する、四肢のしびれや脱力、視力低下などがみられます。
8 末梢神経障害(脱髄以外)、重症筋無力症、筋疾患(多発性筋炎など) 急性から慢性に進行する、手足のしびれ・感覚低下・脱力がみられます。
9 頭痛症(片頭痛、群発頭痛、緊張型頭痛、薬物乱用頭痛) 急性に出現する頭痛であり、月に数回以上みられます。生活に支障をきたす頭痛であり、嘔気・嘔吐を伴うことが多く、音・光・臭いにより悪化するなどの項目に該当する場合には片頭痛が強く疑われます。
10 めまい症(良性発作性頭位変換性めまい、前庭神経炎、メニエール病、突発性難聴、脳虚血発作、脳腫瘍、低血圧、心因性) 急性から慢性に出現する、めまい(回転性あるいは浮動性)やふらつきです。耳鼻科領域の疾患が原因のことが多いですが、脳神経疾患が原因のこともあります。
11 不随意運動(振戦、顔面痙攣、ジストニア、舞踏病、アテトーゼ、バリスム) 急性から慢性にみられる、顔や手足の不随意な動きです。
12 その他  

※上記1~4と7~11の一部が脳神経救急疾患に該当しますが、それ以外の疾患でも症状が急速に進行した場合や、合併症により全身状態が悪化した場合には、救急処置が必要となります。よって、救急受診なのか通常外来受診なのかの判断は、患者さまご自身、ご家族さま、家庭医の先生でしていただくことになります。判断に迷う際には病院までお電話にてご相談ください。

※当科では「脳脊髄液減少症」「線維筋痛症」「ナルコレプシー」「神経障害性疼痛(三叉神経痛や帯状疱疹後神経痛など)」の診療はしておりませんのでご注意ください(「脳脊髄液減少症」の診療病院は京都府のホームページをご参照ください)。

外来患者数(2020年度、2021年度)

2020年 2021年
初診外来 422 448
再診外来(延べ) 7,611 8,264

入院患者数

2020年 2021年
脳血管障害 319 356
神経感染症(脳炎、髄膜炎など)、急性脳症 26 26
てんかん発作 39 50
免疫関連性中枢神経疾患(多発硬化症など) 3 3
末梢神経疾患 10 12
筋疾患 0 0
神経変性疾患 25 23
脊髄疾患 5 2
中毒性神経疾患 0 0
その他 47 77
合計 474 549

診療実績(2020年度、2021年度)

手術・検査名 2020年
(件数・人数)
2021年
(件数・人数)
脳血管造影検査 124 265
神経超音波検査 1420 999
神経電導検査/針筋電図 223 180
脳波検査 524 539
アルテプラーゼ(rt-PA)静注療法) 21 21
Door to Needle(中央値、分) 43 65
ENER(緊急脳血管内血行再建術) 81 101
経皮的脳血栓回収術 56 73
Door to Puncuture(中央値、分) 63 68

※ 脳神経・脳卒中科のみ

患者さまへ

意識障害

意識障害の原因は様々です(図)。
脳の問題で生じることもありますが、他の臓器や、全身状態に関連して意識障害を生じることがあります。特に急性発症の意識障害においては、救急科と連携をとり、全身疾患の鑑別を進めながら、脳神経に問題がないか診療を行います。
CTやMRIといった時間のかかる検査を行う場合、診療中に急変される場合もありますので、スタッフの確保をした上で慎重に実施します。同時に、迅速に対応すべき疾患に注意を払い、治療のタイミングを逃さないように尽力いたします。

急性期脳梗塞

見えにくさ、しゃべりにくさ、口の片側のゆがみ、半身のしびれや脱力、歩きにくさ、激しい頭痛などが突然みられた場合には、脳卒中の可能性が高いです。救急車で当院を救急受診してください。当院に救急搬送後は、まず頭部CTにて出血性脳卒中(脳出血、くも膜下出血)であるのか、虚血性脳卒中(脳梗塞)であるのかを診断します。前者であれば当院脳神経外科が、後者であれば当科が診療を担当いたします。急性期の脳梗塞例(発症24時間以内)では、造影CT(CTA)を追加した上で、治療方針を決定します。ときに頭部MRI/MRAを追加撮影することもあります。超急性期脳梗塞では、「1秒間に3万個ずつ神経細胞が傷害されていく」といわれているため、1秒でも早い再開通治療の開始が重要となります。再開通治療には血栓溶解薬(rt-PA)の点滴治療とカテーテル手術であるENER(Emergency NeuroEndovascular Revascularization:超急性期脳梗塞に対するカテーテルを用いた再開通治療の総称)の2種類があり、両者を併用することもあります。原則として発症から4.5時間以内で各条件が合致する方にはrt-PA点滴治療を、発症から24時間以内で各条件が合致する方にはENERを実施いたします。再開通治療以外に脳保護治療や抗血栓治療もあります。これらの治療開始後は、救命救急病棟への入院となります。入院後は各科医師や看護師、コメディカルスタッフによる多職種チーム医療を受け、状態が安定した時点で急性期脳卒中センター(B4病棟)に転棟となります。同センターでは急性期リハビリテーションと全身疾患の管理、脳梗塞の原因精査の結果に基づく最適な再発予防治療の決定が行われます。後遺症が軽ければ、1週間から2週間で自宅退院し、その後はかかりつけの先生のおられる診療所への通院を継続してもらいます。そして1-2年に1回は当科外来でも診察と画像検査を行わせていただきます。一方、日常生活に支障をきたす後遺症が残存してしまった方は、当院と連携している回復期リハビリテーション病院や生活期病院に転院した上で訓練や生活を継続していただくこととなります。

脳梗塞の発症・再発予防

一方で脳梗塞の発症・再発の予防も重要です。脳梗塞を発症された後であれば、脳梗塞の原因精査を行い、脳梗塞の病型分類をします。一般的な精査を行っても原因が不明な場合もあり、特に原因不明の脳塞栓症をESUS (Embolic stroke of undeterminde sources)と称します。当科では、ESUSと判断された患者様に対して、経食道心臓超音波や植込み型心電計(Reveal LINQ)を用いた、より積極的な原因精査を行っています。植込み型心電計に関しては、循環器内科医師や臨床工学技士との連携のもとで植込みからその後の管理までを実施しています。
また、脳卒中専門外来を設けており、そこで脳卒中専門医が脳梗塞の初発/再発予防法について助言や指導をおこなっております。脳ドックを当院や他施設で受けられた後の二次健診の方には,頭頸部画像検査結果の説明や追加検査の提案などもしております。

てんかん

「てんかん発作」とは「脳の慢性疾患」で、脳の不安定な神経細胞に突然発生する激しい電気的な興奮により繰り返す発作を特徴とし、様々な臨床症状(全身のけいれん、「一時的に」ぼーっとする、言葉が出ない、行動や様子がおかしい、幻覚が出るなど)を呈します。特に高齢者では、認知症と間違われるような症状だけを呈する(図1)場合があります。
生涯を通じて1回でも発作を経験する人は人口の約10%、2回以上は約4%、そのうち「てんかん」と診断される人は約1%で、日本では約100万人(100人に1人程度)のてんかん患者が存在します。原因としては、生まれつき不安定な神経細胞を有する場合や脳に後天的に傷(脳卒中、脳挫傷、脳腫瘍、認知症)がつくことで不安定性が出現する場合があります。過剰興奮するきっかけ(誘因)としては、新規の脳卒中、睡眠不足、過労、アルコール、発熱、特定の薬剤などが挙げられています。上記の「きっかけ」がなく,てんかん発作を繰り返す病気のことを「てんかん」と言います。
てんかん発作が疑われた場合はMRIで脳に「傷」がないかを検索し、脳波で不安定な神経細胞の有無を確認します。また問診や採血で「きっかけ」を探します。発作自体は、数分以内に自然に軽快する場合が大半です。治療としては、発作の再発予防を目的としており、誘因がある場合はそれを回避、ない場合は抗てんかん薬の調整をおこないます。数分以内で自然に軽快しない発作は、薬剤を用いて発作を抑える必要があり、ビデオ付きのポータブル脳波を用いながら、時には全身麻酔療法も併用して抗てんかん薬の薬剤の調整を行います。
ご家族様の対処法としては、全身性けいれんを目撃した場合は救急要請をしてください。すでにてんかんの診断を受けている方でなおかつ,発作が速やかに消失した後に意識清明となられた際には,救急ではなく後日の当科外来の受診でも結構です.全身性けいれん以外にも「一時的に」ぼんやりとする、言葉が出ない、行動や様子がおかしい、一点凝視するような症状が繰り返し出現し、状態が良いときと悪い時の差が大きい場合はてんかん発作が疑われますので、可能であれば周囲の人が発作中の様子をスマートフォンなどで撮影した上で当科外来を受診してください。

脳炎・脳症

脳炎・脳症とは、脳の広い範囲に炎症が起こり、ぼんやりとしている、言動がおかしい、性格が変わったなどの症状が急激に出現するご病気です。通常、脳以外に症状の原因となる疾患がみつからない場合に疑われます。原因としては、ウイルスなどの感染症や自己免疫疾患、腫瘍、薬剤、代謝性疾患などが挙げられます。一部には原因不明のこともあります。症状の経過と、頭部MRI検査や髄液検査、脳波検査、血液検査などの結果から総合的に診断します。治療方法には、抗ウイルス薬、ステロイドや免疫グロブリンの点滴、血漿交換療法などがあります。関連する腫瘍がみつかれば外科手術や化学療法もおこないます。原因によっては、ステロイドや免疫抑制剤の内服が数年間必要となることもあります。治療がうまくいけば元の生活に戻れる場合もありますが、認知機能や運動機能の障害を残したり、てんかん発作を繰り返す場合もあります。後遺症によっては回復期リハビリテーション病院に転院したうえでのリハビリテーションが必要となります。

上述した疾患が疑われる場合には原則救急受診してください。

一般脳神経内科疾患(以下の疾患が疑われる場合には原則当科外来を受診してください)。

  1. 慢性的にみられる、頭痛、めまい、しびれ、しゃべりにくさ、手足の動かしにくさ、認知症、パーキンソン病様症状などの精査・加療をご希望の方は、当科外来での診療を行います。
  2. ただし、必ずかかりつけ医または診療所に紹介状(診療情報提供書)を作成してもらうとともに、外来診療枠を予約した上で受診してください(完全予約制)。
  3. 当科では、超急性期脳梗塞のカテーテル手術(ENER)を常時実施しています。よって、緊急手術が必要な別の患者さまが救急搬送された際には、外来担当医師が一時的に不在になったり、変更となったりするとともに、診察まで長時間お待たせすることもあります。その点につきましても予めご了承頂きたく存じます。
  4. 土日祝日は休診日となっております。また、平日の新患予約は原則午前中であり、さらには予約枠に制限がある点につきましてもご理解ください。

認知症、軽度認知機能障害

認知機能障害が疑われる方には、まず認知症看護認定看護師らの協力のもとで、病歴、診察所見、認知機能評価スケールなどより、認知機能障害の程度を評価します。その後、当科医師による神経学的診察、血液検査、画像検査(頭部MRI/MRA、脳血流シンチグラフィー、脳波など)にて、認知機能障害の原因を診断いたします。根本的な治療が可能な疾患(treatable dementia)では治療を実施します。認知症の原因疾患の半分以上がアルツハイマー型認知症といわれています。この疾患に対しては残念ながら根本的な治療法が確立されていません。ただし、進行を遅らせる薬の選択や周辺症状(徘徊や興奮など)のコントロールを適宜心療内科とも相談しながらおこないます。同時に、ご自宅でのケアの方法について、看護師を含めたスタッフがご家族さまと相談いたします。介護保険や福祉制度の利用については当院医療相談室スタッフからもご案内させていただきます。当科での治療方針の決定後には、かかりつけ医の先生の方で投薬と全身管理を継続していただくこととなります。

連携病院・開業医の先生方へ

当科では「脳卒中・神経救急ホットライン」により、24時間365日いつでも神経救急疾患が疑われる患者様の受入れを行っています。具体的には、①脳卒中を疑うFAST(Face、 Arm、 Speechのいずれかの異常・発症時刻Timeを確認いただいて)、②けいれん、③意識障害のいずれかがみられる急性期患者様がおられたら、いつでも当科の「脳卒中・神経救急ホットライン」にご連絡ください(医師と救急隊の専用回線となります。番号は地域連携室にご確認ください)。

急性期脳梗塞

急性期脳梗塞に対する再開通治療につきましては、本邦における2005年のtPA静注療法の国内承認、2010年の経皮経管的脳血栓回収機器(Merci)の薬事承認(ENERの専用機器)、2012年のtPA静注療法の適応時間の4.5時間までの延長(同療法の指針)などを受け、当科でも日常診療として数多くの方に実施してきました。ENERは今までエビデンスが未確立でしたが、諸外国での臨床研究の結果を受け、2017年9月26日、本邦の脳卒中ガイドラインでも遂にグレードAの治療(強く勧められる治療)に格上げされ、さらに最新のガイドライン2021では、発症(最終健常確認)から24時間後までであれば、画像上の条件を満たした一部の症例で同治療が推奨されるようになりました。
その一方で、症状出現から短時間で再開通治療をおこなわないと、麻痺などの神経症状を改善することができません。そこで、当院では医師、看護師、放射線技師、研修医が一丸となって、当院への搬送からENERでの再開通までの時間を短縮することに取り組んできました。具体的には、脳卒中ホットラインの開設、造影CT(CTA)での適応決定、時間短縮のための多職種での振り返りカンファレンスの定期開催などを順次導入してきました。その結果、搬送から再開通までの時間は中央値90分以内を達成いたしました。
また、脳梗塞は再発しやすい疾患ですので、再発予防のための適切な治療を急性期から開始することも重要となります。心電図や各種超音波、場合によっては経食道心臓超音波、造影CT、脳血管造影検査(カテーテル検査)、植込み型心電計(Reveal LINQ)などの検査を駆使して、可能な限り脳梗塞の病型を診断して、適切な再発予防薬を決定します。
更には脳梗塞をきたす高齢者では再開通治療後に併存疾患の増悪や新たな疾患の合併が問題となることもまれではありません。そのため上述しました通り、当科スタッフは内科学と脳神経学、救急医学、脳神経血管内治療学、脳神経超音波学、血液凝固学についての専門的な知識と技能を有した上で病院全体のチーム医療の中心として働いております。具体的には、下記の“RED CROSS”*1に沿った集学的治療をチーム医療として実践しています。脳梗塞は内科疾患の中でもterminal stageに生じる疾患であり、担当診療科だけでなく病院全体の総合力が問われる疾患であることは間違いありません。脳梗塞が疑われる方は少しでも早く当科にご紹介いただきたく存じます。 脳梗塞の急性期管理で状態が安定した患者さまは、回復期リハビリテーション病院への速やかな転院を目指すことになります。その一方で回復期リハビリテーションを受けることができない患者さまは生活期病院への転院となります。回復期リハビリテーション病院および生活期病院の先生方には日頃より非常にお世話になっております。この場をお借りして御礼申し上げます。
回復期リハビリテーションを終了された、あるいは直接自宅に退院された患者さまの診療につきましては、かかりつけ医の先生方にお願いしています。かかりつけ医の先生方には、患者さまの生活習慣病の管理、抗血栓薬の継続、併存症/合併症の治療を実践いただくとともに、当科外来に1~2年に1回、患者さまをご紹介して頂きたく存じます。当科外来では神経学的診察と画像検査を実施させていただきます。

*1RED CROSS:”RED CROSS” is an acronym indicating essential points in the management of acute ischemic stroke patients as follows, R&R: Recanalization therapy (i.e. IVtPA, endovascular technique) and Reduction of the intracranial pressure (i.e. open surgery, glycerol, head-up); E&E: administration of Edaravone (neuro-protection agent) and control of the Environment (i.e. Hypothermia therapy); D&D: antithrombotic Drug (i.e. aspirin, argatroban, ozagrel Na, clopidgrel, cilostazole) and hemoDilution therapy(drip of LoMoDx); C&C: management of Complications (i.e. pneumonia, UTI, decubitus, DVT etc) and Comorbidity (i.e. Af, CHF, AP, ASO, CKD, malignancy etc); R&R: acute Rehabilitation (PT/OT/ST) and no Restriction of activity; O&O: Oral intake (control of nutrition)and control of Obstipation (control of diarrhea or constipation); S&S: diagnosis of Stroke subtype (cardiogenic, atherothrombotic, lacunar, others, ESUS, and undetermined etiology) and decision of Secondary prevention (Aspirin, Clopidgrel, Cilostazole, Prasugrel, strict management of risk factors); and S&S: Speedy and Seamless discharge to home (family doctor) or other institutions (rehabilitation hospital etc).

てんかん

脳卒中や認知症の増加に伴い、経年的に高齢者のてんかんも増えてきています。
特に非けいれん性のてんかん発作は家族でも気づかないことが多く、認知症と誤解されていることもあります。症状に変動がみられるようであればてんかん発作を疑い当科外来にご紹介ください。血液検査、頭部MRI、脳波検査、髄液検査などをおこない診断させていただきます。
脳波検査に関しては小児科や検査技師、看護師とともに定期的に脳波勉強会(EEG-Club)を開催し、日々診療の質の向上を目指しております。
ただし、診断が難しい場合には他施設のてんかん専門外来に紹介することもあります。

脳炎・脳症

脳炎・脳症では、脳の広範囲に炎症が起こり、意識障害や精神症状、人格変化などが急性~亜急性~慢性に出現します。重症の場合は昏睡状態となることもあります。痙攣発作やジストニアなどの不随意運動、小脳症状、自律神経症状、感覚症状を伴うこともあります。原因としては、感染性、自己免疫性、傍腫瘍性、薬剤性、代謝性などがあり、原因不明な場合も3-4割あります。症状の経過と、脳・脊髄MRIや髄液、脳波、血液などの検査所見から総合的に診断いたします。急性期治療として、抗ウイルス薬の点滴、ステロイドパルス療法(およびステロイド内服による後療法)、免疫グロブリン大量静注療法(IVIg)、血漿交換療法などをおこないます。治療抵抗性の場合はシクロホスファミド静注療法や免疫抑制剤の内服なども考慮します。傍腫瘍性の場合には各専門科にて腫瘍摘出術や化学療法を実施します。急性期からの回復期にかけて高次脳機能障害や運動機能障害が残存したり、難治性てんかんを発症したりすることもあります。後遺症の程度によっては、リハビリテーション継続のために回復期リハビリテーション病院への転院を要することもあります。当施設では、腎臓内科・腎不全科や産婦人科などとも協力した上で集学的治療が実施可能である点が最大の特徴です。脳炎・脳症が疑われる患者さまがおられた場合にはいつでも当科にご相談ください。

学生・研修医・看護師の方へ

上述しましたように、当科は脳神経救急医療に積極的に取り組んでおります。その中でも超急性脳梗塞のカテーテル手術による再開通治療(ENER)に最も注力しています。この手術は放射線看護師と放射線技師の協力なしには成り立たないものです。よって、日頃からの多職種チーム医療の鍛錬が重要であり、医師と看護師、技師による合同術前カンファレンスを待機的カテーテル手術前日に毎回開催し(原則火曜日夕方)、症例毎の注意点を皆で検討しています。脳神経救急医療や脳梗塞のカテーテル手術に興味のある方はぜひ一度当院に見学へ起こしください。

日本神経学会 全国の認定施設企画・セミナー等のご案内

京滋ISLSコースへのお誘い

ISLSとは”Immediate Stroke Life Support”という脳卒中初期診療を学習する医療従事者用のoff the jobコースです。医師、研修医、看護師、技師、救命士、その他コメディカルの方が受講対象者となります。京滋地域では、京都大学、滋賀医科大学、京都府立医科大学の3大学の持ち回りで、4ヶ月に1回のペースで開催しています。1日コースであり、午前中は座学、午後は実技となっております。京滋ISLSでは、原則的にはISLSコースガイドブック*2のフローチャートに従いながら、A(Air way:気道)、B(Breathing:呼吸)、C(Circulation:循環)、D(Dysfunction:意識障害、瞳孔、上下肢の麻痺)の評価と応急処置について患者来院より10分以内に完了することを目標学習します。同時に、E(Examination:採血、心電図、胸部レ線、頭部CT)、E(Expert:専門医への申し送り)、F(Family:家族への病歴聴取、tPA静注チェックリストの完成、専門医による各手技同意取得ための家人への待機要請)を患者来院より20分以内に完了することを目標に修得していきます。さらに、意識障害の程度とその原因疾患の鑑別、NIHSSの正確な評価法、くも膜下出血例での愛護的処置の重要性などについても総合的に学べるコース内容となっています。

京滋ISLSの開催要項は以下のブログ*3に掲載されております。興味のある方はぜひ一度ご覧ください。

  • *2 ISLSの教科書:日本救急医学会監修。ISLSコースガイドブック2018。へるす出版、2018
  • *3 京滋ISLSのブログ:http://kyotoisls.blog82.fc2.com/

※現在(2022年5月)、コロナ禍のためISLSコースは開催を見合わせております。
感染状況をみて再開時期を検討いたします。

当科が参加している多施設共同臨床研究

現在参加の治験内容を提示予定

臨床研究の公開ページ参照